角田裕毅は「異例の戦略」でモナコ8位を奪取 ペースを抑えて「わざとゆっくり」走った理由
【すべて完璧にやりきった最高のレース】 「仮にセーフティカーが出ても後続勢がピットインできないように、ギャップをコントロールするためにペースを抑えることを何度もやりました。速く走ろうと思えば走れる速さがあることはわかっていたので、ドライバーとしてはフラストレーションを感じましたけど。 でも、それはレース前に話し合っていたことで、こういう展開になることもある程度はわかっていました。貪欲になりすぎず、きちんとタイヤをいたわって、それがうまくやれたのには満足しています」 1分21秒台から始まって、60周目までは1分19~20秒台でコントロール。ここから一気に17秒台にペースを上げ、ラスト5周で「もう全開で走っていいぞ」と言われると1分14秒台の速さを見せた。いかに角田がペースを抑えて走っていたかがわかる。 ずっと角田の背後1秒以内を走っていたアルボンは1分17秒台がやっとで、角田のプッシュについてくることができなかった。角田の完勝だった。 上位に脱落者がいなかったため、角田は8位となった。しかし、それは8位という数字でしかなく、ドライバーとしてやれることをすべて完璧にやりきったという意味では、これ以上ない最高のレースだった。それは予選8位という、中団最上位の結果を出したことにも言えた。 「過去2年間ここ(モナコ)ではポイントが獲れませんでしたし、特に初年度はよくなかった(予選11位・決勝17位)ので、そこから毎年成長してこられたのはよかったなと思います」 難攻不落のモナコは、すでに手なずけたと言っていい。このモナコでの走りが一流F1ドライバーとしての揺るぎない評価の対象となり、角田のさらなる未来を切り拓いてくれることだろう。
米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki