大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌
少数民族はいたものの漢字と儒教で価値観を統一した中国、スラブ民族が多数派でロシア正教があったロシアとは、成り立ちが異なるのです。 この多様性は、今のインドの政党に反映されています。地域政党も多く、「インドを知るには政党を知れ」と言えます。 ■民族、言語、宗教が政党に表れる インドの主要な政党を見ていきましょう。まずは現在の与党であるモディ首相のインド人民党(BJP)。人民党は、モディ首相の出身州であるグジャラート州をはじめとした北部で根強い支持があります。北部はヒンディー語話者が多く、ヒンドゥー教を重視する同党の主張が受け入れられやすい面があるのです。
「インド人民党は、経済はグローバル志向ですが、政策的にはナショナリズムが強い……というか、ヒンドゥー教至上主義とも言われます」 もしも私がインド人民党の人の前でこう説明したら、激しく否定されると思います。実際、2023年に訪米したモディ首相はジャーナリストからイスラム教弾圧を指摘され、「我々は民主主義国家であり、そんなことはあり得ない」と啖呵を切っていました。 モディ首相が断言するのは政治家として当然で、インドの憲法は世俗主義の原則に基づき、宗教と政治を切り離すように定めています。しかしインド人民党はヒンドゥー教に優しくイスラム教に厳しいのは事実ですし、他の政党も宗教の影響は多分に受けています。
たとえばモディ首相の政策で、社会的活動を行う多くのNGOが解散を命じられています。解散の理由の一つは、宗教。キリスト教やイスラム教がバックにある場合は、免許取り消し・解散になることが増えています(Economist2024年2月24日―3月1日)。 インド人民党に対抗しうる政党が、インド国民会議派(Indian National Congress)。インド人民党よりはリベラルな志向を持ちます。2つの政党が交代で政権をとっていたために、国民会議も財界との関係も深く、インドは「小さな政府か、大きな政府か」どちらを志向するか、一概には言えないところがあります。