アメリカで「男性中心主義者たちの配信」が、若者世代に大人気になっている…その「意外な理由」
なぜマノスフィアが人気を博す?
このように男性性が誇張されたポッドキャストが、なぜ大統領選を左右するまで人気を博すのだろうか? マノスフィアの住人の多くは、男として生まれながら自分の男性性に自信が持てなかったり、自分がそんなふうに自信をもてずに弱気で生きなければならない現代社会に強い不信感を持っている。 その原因は女性だ……と彼らは考えているようだ。 たとえば現在のアメリカでは、女性の大卒の割合は男性よりも高くなっている。社会でも女性リーダーが増え、その地位は確実に上がっている。しかし社会が問題視するのは、人工妊娠中絶の権利など女性の人権に関するものがほとんどだ。そうした中で自分は取り残されている――そんなふうに自分を「被害者」だと感じたり、そのためにフェミニズムへの反発を感じてたりしている者も多い。 その一方で、一部の男性のあいだでは、そうした考え方とはまったく反対の「有害な男性性」という考え方も広がっている。「従来の男らしさは男性に押し付けられたもので、感情を抑え込んでメンタルを病んだり、支配的で攻撃的な行動につながる“有害なもの”」という考え方だ。 しかし、当然ながらこうした傾向への反感や不満、不安も男性のあいだで広がる。そうした反感や不満を受け止めてくれるのも、マノスフィアのポッドキャストなのだ。 こうした背景に加え、今回ハリスが女性候補だったこと、女性の権利として中絶擁護を前面に掲げていたことなどが、マノスフィアの男性を刺激したと見られている。トランプ当選は、この男女間の分断を、一面では映しているのかもしれない。 振り返ってみれば、イーロン・マスク氏も次期副大統領のJD ヴァンスも、そして当のトランプ氏自身も、男らしさを前面に出すという部分でも、女性蔑視的な発言を繰り返すという意味でも、ある種の「マノスフィアの住人」と言えそうだ。 2024年の大統領選は「マノスフィアの勝利」だったのかもしれない。
シェリー めぐみ(ジャーナリスト・Z世代評論家)