信頼していた知人が、実は詐欺師だった...身近に潜む「搾取ビジネス」の罠
至るところに「搾取ビジネスの危険因子」がある
インターネットやSNSが普及し、情報化社会が加速する中、困ったことが起きています。 膨大な情報に囲まれ、脳の処理が追いつかない中、自分にとって都合のよい情報だけを見聞きしようとすることや(確証バイアス)、平常心を保つため、過度に悪い状況と判断しないようにする「正常性バイアス」が、悪いように作用することがあります。 自らにとって(一見)都合のよいことを言う人たちばかりで集まったり、反対に自分の考えにそぐわない人たちを、過度に攻撃したりするといった悪影響が生じるのです。このような集団やコミュニティに染まる中、自らの「不知の自覚」ができなくなる状態を「集団浅慮(グループシンク)」と言います。 そして、この状態に陥ると、物事の判断が鈍るだけではなく同調圧力などによって、平常時ならおこなわないような不適切な行動を取ってしまうことがあります。 つまり、よかれと思って属している集団や、コミュニティの正体が「搾取ビジネスの巣窟」であった場合、知らないうちに自らも搾取に加担する危険性があるのです。
なぜ搾取ビジネスを「する側」に回ってしまうのか?
知らないうちに搾取側に回るケースは、主に「よかれと思って」周辺に薦めていた商材やビジネスモデルが、じつは搾取ビジネスに加担していたという無自覚なものです。 これはまだマシなほうで、搾取ビジネスの怖いところは「知らないうちに」ではなく、意図的に搾取側に回ろうとする人も少なからずいます。搾取ビジネスは、これまでもお伝えしたように、オイシイ話で人を集めて提供元が儲かるようにできています。 つまり、一見「稼ぐ方法」や「成功法則」と標榜されていても、実際に稼いでいるのは提供側であって、その商品なりサービスなりの購入側ではありません。たしかに、購入側も一部はうまくいくことはあるでしょうが、それはたまたまであって、そこに提供されたものとの明確な関係はありません。 そうすると言うまでもなく、購入者側にも「提供側に回らなければダメなんだ」ということに気づく人が出てきます。 するとどうでしょうか。今まで提供されてきた商材は、そのまま搾取ビジネスに取り組むための教材と考えることもできます。 こういう被害者から搾取側への転換は、もともと「稼げる」や「成功する」などとオイシイ話で惑わされた人ほど、陥りやすいと言えます。 たしかに、自分が見事にハマってしまった反面、言い換えれば比較的ラクに稼げる仕組みに見えますし、魅力的にも映るでしょう。しかし、搾取ビジネスに手を染めると、なかなか後戻りすることができません。 さらに、こういうビジネスは一見、稼げるように見えますが、長続きできる仕組みではありません。 堅実なビジネスや、特異な能力を前提としたビジネスと異なり、実績や人的資産などが蓄えられていくものではないのです。やがて、自らの破綻につながりますし、場合によっては社会的な制裁や法的なペナルティを負うことにもなります。 もし、搾取ビジネスの被害にあったとしても、それを別のところで転用するのではなく、教訓にして、地に足を着けたビジネスの輝かせ方を実践していただきたく思っています。そのためには「稼げる」「成功する」などに対する自らの「欲望」のコントロールが必要なのです。
服部真和(行政書士)