対北朝鮮政策は「失敗だった」 米国が取り得る3つのシナリオ
「北朝鮮に対する過去の非核化政策は失敗だった」。ティラーソン米国務長官はこう認識を示しました。「戦略的忍耐」を掲げたオバマ時代をはじめ、過去20年間の政策を振り返ったものです。トランプ政権の対北政策はどうなっていくのか。元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】4度目の核実験 北朝鮮はなぜ核を持とうとするのか?
核実験、ミサイル発射続ける北朝鮮
核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進める北朝鮮は最近もミサイルの発射実験や新しい大型エンジンの噴射実験など挑発的な行動を続けています。 一方、米国のトランプ新政権は北朝鮮に対する政策を見直しています。ティラーソン国務長官は3月16日、東京で岸田外相と会談した後の記者会見でそのことに言及し、また、「北朝鮮に対して非核化を求めた過去20年間の政策は失敗だった」とも言いました。 北朝鮮が核開発に進む恐れが出てきたのは、1993年に核兵器不拡散条約(NPT)から脱退すると宣言してからです。これに対し米国は日本や韓国などとともに朝鮮半島エネルギー開発機構 (KEDO)を設立して北朝鮮の核開発を放棄させようと試みました。 2003年からは北朝鮮、韓国、中国、ロシア、米国および日本による6者協議を行いました。しかし、北朝鮮は開発を継続し、2006年に初の核実験を行い、2016年には水爆実験もしました。確かに北朝鮮に非核化を求める努力は失敗続きでした。
(1)中国から働きかける
では、米国は今後、北朝鮮に対してどのような新政策を打ち出せるでしょうか。 一つの選択肢は、中国がその影響力を強化して北朝鮮の核開発を止めさせる方法です。中国は北朝鮮のエネルギー需要の約半分を供給しているとも言われており、本当にそうであれば、中国の影響力は絶大のはずです。 しかし、中国が供給しているのは主として石油であり、北朝鮮の石油需要は多くありません。石炭に依存する度合いが高いからであり、約8割だとも言われています。石炭は北朝鮮国内で豊富に生産されており、石油とは逆に中国へ輸出もしています。 また、これまでの経緯を見ても、米国は中国に対して北朝鮮への働きかける強くするよう何回も求めました。しかし、今日に至るまで北朝鮮の核・ミサイルの開発を止めさせることはできませんでした。 したがって、中国に北朝鮮への働きかけを強めるよう求める方法が有効か、疑問と言わざるをえないのですが、ティラーソン国務長官は米上院における就任前の審査で、中国が北朝鮮に対する働きかけを強くすることが重要であると述べており、また、岸田外相との会談後の記者会見でも「中国の役割が極めて重要だ」と発言しています。これではブッシュ・オバマ時代と基本的には同じ考えであり、トランプ政権としても新味を出せないでしょう。 しかし、米中首脳会談を前に、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューでトランプ氏は「中国が北朝鮮問題を解決しないのならば、米国がやる」と語ったとされます。トランプ政権の考えはまだ固まっていないのでしょう。