朗読会「核無くなるまで」 原爆絵本、語り続ける女性 被爆者の思い言葉に乗せ
原爆の悲惨さを描いた絵本「ひろしまのピカ」の朗読会を続ける女性がいる。 俳優の岡崎弥保さんは、2015年から全国各地で多くの聴衆を前に、登場人物を演じてきた。「世界から核兵器が無くなるまで続けたい」。物語を通して被爆者の思いを伝えている。 【写真】インタビューに応じる俳優の岡崎弥保さん 「ひろしまのピカ」は被爆の惨状を描いた「原爆の図」で知られる画家・丸木俊の著作。東京電力福島第1原発事故後の被災地の様子を見て核問題に関心を持ち、足を運んだ「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)で出合った。つづられていた7歳のみいちゃんの被爆体験が実話に基づいていると知り、衝撃を受けた。 「この物語を朗読したい」。強い思いに突き動かされ、15年に同美術館で初めて上演し、これまでイベントや小学校などで51回を重ねる。「これは実際に起きたことだと伝えたい」と、みいちゃんやお母さんに成り切って言葉一つ一つに感情を込める。 ある会場に、5歳の女児が訪れた。最初は退屈そうだったが、朗読が始まると、表情が真剣に。後に女児の祖母から「(女児が)毎日戦争やピカの話をするようになった」と聞き、「幼い子でも心に留めてくれたんだ」と驚いた。 生々しい被爆の描写を怖がる子もいる。だが、「丸木俊さんも『怖くない原爆はない』と悩みながらつづったと思う。最初は怖くても、真剣に向き合って話せば受け止めてくれる」と信じている。 被爆者から受け取った思いが原動力だ。「私たちはいずれいなくなるから、語り継いで」と言われることが多かったという岡崎さん。実際に親しい被爆者が亡くなった時、言葉の重さが身に染みた。「本当にいなくなってしまうんだ」 つらさを抱えたまま朗読を続けていると、ある被爆者から「『徳は孤ならず必ず隣あり』。信念を持っていれば必ず仲間ができる」と励まされた。「同じ志を持った人はきっとたくさんいる。歩み続けていかなくてはと思えた」と涙を拭う。 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞決定を素直に喜ぶ一方で、緊迫する世界情勢への危機感の表れとも感じている。「核の問題は、人類皆が当事者。これを機に平和を願う思いが集結していってほしい」と力を込めた。