「デジタル避難所」として大きくなったテレグラム、性搾取の「デジタル温床」に=韓国
テレグラムの創業者であり最高経営者(CEO)であるパベル・ドゥロフ氏(39)が24日(現地時間)、フランスで逮捕され、これまで韓国社会を揺るがした各種の性搾取犯罪のルートとなってきたテレグラムの過去の行跡も注目されている。2014年と2016年の2度の「テレグラム亡命」で韓国人ユーザーを大きく増やしたテレグラムは、「n番部屋事件」などデジタル性搾取の温床となったが、捜査機関の協力要請には徹底的に「無回答」で一貫してきた。 韓国でテレグラムが初めて主要メッセンジャーに浮上したのは、10年前の朴槿恵(パク・クネ)政権時代だ。2014年9月、朴槿恵元大統領が国務会議で「大統領を冒涜する発言が度を越した」と発言した直後、検察は「サイバー虚偽事実流布専門担当捜査チーム」を別途構成した。当時、検察の専門担当捜査チームがモバイルメッセンジャーなどをモニタリングしていることが知らされ、カカオトークのユーザーが大挙してテレグラムに加入し始めた。 2013年にドイツで発売され、現在は本社をアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに置くテレグラムは、強力なセキュリティが特徴だ。特に「終端間暗号化技術」を活用した「秘密対話」は、送信者と受信者を除いては中間で奪って解読することは不可能だ。 約1年後の2016年4月、テロ防止法の通過は「第2次テレグラム亡命」を触発した。国家情報院などの国家機関による査察への懸念があがり、カカオトークなど韓国のメッセンジャー利用者が再び大勢離脱し始めた。特に当時は、野党だけでなく法案の通過を主導した与党(セヌリ党・現、国民の力)の人々も相次いでテレグラムに加入するなど、政界の「亡命行列」が続いた。 このように捜査機関が私人の間での内密な対話を覗き見ることができるとの憂慮が繰り返され、テレグラムの韓国国内での利用者数は急速に増えた。モバイルインデックスによると、4月基準でテレグラムの韓国国内での「月間活性ユーザー数」は300万人で、カカオトーク(4492万人)に続き2位を占めた。 しかし、テレグラムの強力な保安性には致命的な影も存在する。2019年のテレグラムn番部屋性搾取物作成および流布事件が代表的だ。 2020年10月に野党「共に民主党」のキム・ヨンベ議員が韓国警察庁から受け取った「テレグラム資料提供要請内訳」によれば、警察はn番部屋を捜査する目的で7カ月間に7回にわたりテレグラムに捜査協力要請メールを送ったが、返事は来なかった。当時、テレグラムのセキュリティ担当者のメールアドレスさえ把握できなかった警察は、掲示物の申告に使われる汎用メールアドレスに公文書を送った。結局、テレグラムの協力を得られなかった警察は、ツイッター・フェイスブック・仮想通貨取引所など他のプラットフォームで把握した物証でチョ・ジュビンなど加害者を捕まえた。 今年5月には、テレグラムを利用した「ソウル大学違法合成物流布事件」が新たに明らかになった。ソウル大学の卒業生たちが、卒業アルバムやSNSに掲載された同門たちの人たちの写真をわいせつ物と合成した性犯罪映像物を作り、テレグラムのチャットルームを通じて流布したのだ。当時、被害者たちの申告に警察は「テレグラムのサーバーが国外にあるため被疑者を特定することは難しい」として生ぬるい態度を見せたが、被害者と市民活動家たちが偽装捜査で加害者を特定し、犯罪の一味が捕まった。その後、ソウル大学のみならず韓国の70余りの大学別に分類された違法な合成性犯罪物共有のためのテレグラム部屋が追加で明らかになりもした。 このように最近まで各種犯罪のルートとして使われているが、テレグラムは依然として法の死角地帯にある。2021年12月から施行中のいわゆる「n番部屋防止法」(電気通信事業法・情報通信網改正案)では、テレグラムが法の適用対象から除外されている。テレグラムが「私的対話部屋」であるため、インターネット事業者に性犯罪物削除などの措置をするよう定めた法の適用対象に含まれていないためだ。 イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )