ルノー「R.S.アルティメットデイ」 タイムアタックにR.S.の歴史と記録の「生き字引」も登場
編集部イチ速い? ポルシェ乗りのディレクター回想
正直いって怖かった。これがルノー・ジャポンから招待状を頂いた時の感想である。 安全の範囲内でクルマの特長を掴み、それを親愛なる読者の皆様にお伝えする。それだけでいいのに、終始自分の走りを見られ、タイムが貼り出される。 「気にしなくていいよ」「愉しむのがいちばん」 先輩ジャーナリストはそういうけれど、皆、見てないふりして見ている、のである。そういうインシツな世界なのだ。だから若手編集部員に押し付けて傍観しようと思っていた。それを察してか吉田拓生氏から「太朗君、来るよね?」の電話。逃げられなくなった、というのが本音だった。 吐きそうになりながら出走したスラローム。呼吸を乱しながら挑んだ第1走。いくつものコーンを跳ね飛ばし、それに焦ってミスコース。ゴールラインを踏み越えた先に見えた先輩ジャーナリストの視線は冷ややかだった。 あの空気、高校受験に失敗した直後、親戚の集まりの場のギスギス感を思い出した。仮病を使って帰ろうとさえ思った。 第2走目。欲をかかずに4コントロール(4WS)に頼った。ハンドルを切る。クルマが回転するかのようにひらひらとコーンの間を縫う。私の拙い技量を越えて、クルマが勝手に走る感覚。ゴールの向こうの電光掲示板が示すタイムは暫定1位だった。 その後、腕が評判の先輩ジャーナリストの多くが、コーンを跳ね飛ばし、順位を落とした。口を揃えて言う「俺の体に刷り込まれた感覚よりクルマが勝手に動いちまう」 素直になれよ。私が心のなかでそう思ったのは、むろん先輩へではなく、メガーヌR.S.ウルティムに対してである。扱いやすく、御しやすい。自分のスタイルを貫くよりも、クルマに委ねれば速く走れる。これこそが優秀なマシンの本領なのだと実感した。 サーキットタイムアタックでも一緒だった。1分19秒~20秒をマークした。蓋をあけると私より遥かに遅いタイムの人が大半だった。手と足、お尻と背中を通じて、メガーヌR.S.の動きたい方向、ふるまいの意図が生々しい情報として伝わってくる。 唐突な所はなく、ジェントルだ。にも関わらず伝わってくる情報は生っぽく、きめ細かい。 あまり頑張っている感覚がなかったので、タイムをみて驚いた。編集部が所有しているノーマルのメガーヌR.S.にはないLSDの助けも大きい。 日常、快適に移動できて、サーキットでも頼りがいあるメガーヌR.S.ウルティムは名車だと思った。もっと、ずっと、一緒に走っていたいと思った。