「こんな役、僕にやらせます?…」薬物逮捕歴ある俳優に「依存症」役 再起描く映画『アディクトを待ちながら』
■逮捕歴ある俳優をあえて起用した思い 依存症の経験者をあえて起用するのは、今の日本の映画ではなかなか難しい現状があります。 ナカムラサヤカ監督:1人でも薬物とかで問題がある人が出演しちゃうと、上映中止になってしまう。そういう部分が映画界の中にあったんですね。私も田中さんも、すごく不満で、不服で。もう「私達が作るんだから、4人出しちゃおう」みたいなことで、実は出てるんです。もしかしたらどこも映画をかけてくれないかもしれないけど、やってみようと。 ナカムラサヤカ監督:イギリスのエルトン・ジョンとか、アメリカだとエミネムとか、ドラックやアルコールの依存症になったとしても、きちんと回復のステップを踏んでリカバリーした人には必ず手を差し伸べてくれる社会があるわけです。ブラッド・ピットが回復のステップを踏んでいるんだとは多分なかなか知られていないと思うんです。でも海外にはそういう文化がちゃんとあって、「日本にも広めていきたい」ということも含めて起用しました。 福岡市のキノシネマ天神での上映が先週末から始まったので、土日は監督の舞台あいさつがありました。その時のお話をお聴きいただいています。 依存症は「孤立の病」とも言われます。映画のセリフで非常に印象に残ったのは、「自分が自分のこと好きになれなかったからだろ。アディクトになるってさ」というものでした。ひとの心の隙間に忍び込んでくる依存症。依存しないと耐えられなくなる。 そして、孤立が多くの人の原因になっているケースがある。ですから、高知さんたちは、きちんとした更生プログラムを受けていて、同じ立場の人たちで助け合いながら生きています。その様子をワークショップで演じている、という形です。 ■ラストは「シナリオなし」の即興芝居 驚いたのは、映画のラスト15分、台本がなかったことです。ある時点から、台本はないまま、役者の即興の反応によって進行していきます。シナリオなしの即興芝居。どう終わるか分からないまま、撮影しました。その緊迫感に息を飲みます。 ナカムラサヤカ監督:全て、みんなのアドリブですね。即興劇です。今回、私がこの映画を監督するということになった時に、「何か今まで、日本映画でやったことないことができないかな」と思って、初めてのことをやってみました。 まさに、実験的な映画なのです。成立するかどうかなんて、わからない。やってみたら、きわめて迫力あるシーンが撮れています。あの長台詞が即興だった、と知って驚きました。