申込み殺到で受付制限も…「JR東日本の銀行」?給与の振込や住宅ローンは?メイン銀行として使える?
「ポイント経済圏」競争で目立たないネオバンク
だが、総じていえるのは、それなりのメリットは存在しているものの、なかなかユーザーには響かない、ということ。その背景には、銀行を含めた金融サービスが置かれた〝環境〟が大きく変わってしまった点が挙げられる。 昨今、ポイントサービスを基盤とした顧客の囲い込みを目指す「経済圏」競争の中、金融サービスは、勢力拡大のための有力なコンテンツ、というポジションに移行している。1つの企業が単独で特典を打ち出しても、総合力で勝る勢力圏全体で被るメリットを前にしては、霞んでしまうのだ。JRE BANKのような突き抜けた特典でもなければ、ユーザーは反応しなくなっている。 ◆既存銀行のデジタル強化でネオバンクの強みが弱まる 別の要因もある。現在、銀行プラットフォームを一般企業に提供している銀行は、住信SBIネット銀行、楽天銀行、みんなの銀行、GMOあおぞらネット銀行と4つある。その中で、みんなの銀行は、国内初の「デジタルバンク」としての利便性をアピールし、テンプスタッフやピクシブ、イーデザイン損保といった支店を有している。 たしかに、それぞれの企業に関わりのあるユーザーは、入出金や振込などがしやすくなるというメリットがあるが、既存のネット銀行やメガバンクのネットバンキングが機能面で上回りつつあり、あえて口座を開設するというインセンティブが働きにくくなっている。これも、ネオバンクが埋没しやすくなっている要因だろう。 みんなの銀行は、親会社のふくおかフィナンシャルグループが撤退の可能性を示唆したことで、正念場を迎えている(経営陣は撤退については明確に否定)。収益の柱として位置づけていたカードローン事業の伸び悩みが指摘されているが、そもそも、若年層向けに有料の銀行サービスを提供するという、ビジネスモデルには無理があったと思われる。無料で、利便性の高いネットバンキングが可能なアプリが、いくつもあるからだ。 ◆銀行サービスの〝コモディティ化〟は止まらない ネオバンク自体は、今後も増えていくだろう。それに伴って、銀行サービスの〝コモディティ化〟(=一般化)も進むことになる。すでに、銀行の口座開設の手続きは、スマホだけで完結できるようになっている。まるで、ポイントカードを作るような手軽さで、口座開設も解約も可能だ。ユーザーサイドとしては、お得なサービスやキャンペーンがあれば、積極的に利用するのも手だろう。 取材・文:松岡賢治 マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。
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