能登半島地震で集落孤立、ヘリコプターが着陸できず…半島の多い九州でもドローン活用など対策の見直し進む
能登半島地震の被災地では主要道が相次いで寸断され、多数の集落が長期間にわたって孤立した。避難や支援もままならなくなるなど、様々な課題が浮き彫りとなった地震から1年。危機感を強めた九州の自治体でも、対策の見直しや平時の備えの検討が進んでいる。(梅野健吾、横峯昂) 【写真】住民に燃料や食料を届けるため、能登半島地震で孤立した集落へ徒歩で向かう自衛隊員たち(2024年1月12日、石川県輪島市で)
「足元に気をつけて」
鹿児島市・桜島で昨年11月に行われた避難訓練。島内の港で、自衛隊員が避難船に見立てた船に住民役の専門学校生を誘導していた。
訓練は、噴火の危険性が高まって島外避難する事態となる中、さらに地震も発生して陸路の一部が使えなくなったとの想定。市は毎年住民や関係機関と訓練を続けているが、能登半島地震を教訓に、道路の寸断で孤立した地域からの救出を初めて訓練に取り入れた。
活火山の桜島には3000人余りが暮らす。過去の大噴火で大隅半島と陸続きになり道路が整備されているが、そこが破損すれば“陸の孤島”になりかねず、自衛隊や海上保安部などとも連携して手順を確認した。
同市東桜島町の住民(70)は「災害はいつ発生してもおかしくなく、孤立する事態も考えられる。能登は決して人ごとではない」と危機感を募らせる。市危機管理課の脇田浩任課長は「孤立への備えも含め、課題を精査し、災害対応に生かしていく」と意気込む。
能登半島地震では発生から1週間が過ぎても、石川県内で24地区3345人(昨年1月8日時点)が孤立状態だった。同県危機対策課の釜野太志主幹は「どこが孤立しているのかを把握することすら困難を極めた」と振り返る。集落への道が土砂で塞がれ、通信の途絶もあり、自衛隊などが現地に入るまで住民の安否把握もできなかった。
県の地域防災計画では「知事は、孤立した地域の救援等で必要がある場合は航空輸送を実施」などと定めているが、いざ直面すると、ヘリコプターが着陸できる場所がなく、物資を徒歩で運んだ地域も多かった。
こうした経験を踏まえ、同県では、災害時の早急な道路啓開態勢や衛星電話の配備など、より具体的な対応手順の検討を進めている。