引退のロッテ里崎が語る「試合後に歌った理由」
――逆指名の入団契約金は、1億円プラス出来高5000万円と報道されています。 「出来高の5000万円は、残念ながらもらえていないんです。契約金も親の口座に振り込みなんで見たことがないんですが、ドラフトが終わると地元の銀行の人がたくさん家に来たそうです。母親が、朝、仕事に行くために車を出そうとしていたら、背広を着た知らない銀行マンが、いきなり『オーライ!オーライ!』とやっていたとか(笑)。そのお金を使ったのは、車を買うときにちょっと下ろしただけで、今はどうなっているか知りません(笑)。大学でも、親にお金を出してもらったし、契約金などあてにせず『プロとして自分の力がここから稼いでいくんだ』という気持ちでした」 ――漫画「グラゼニ」のように、グラウンドにお金が落ちているんだ!という感覚で? 「いえ僕の16年間は、野球イコール仕事ではなく、野球イコール野球でした。表現が悪いかもしれませんが、遊んでいる感じでした。『仕事なんだ』と思い出したのは、つい、ここ2、3年ですね。怪我をして、うまくいかないことがあって、しんどいリハビリが続いたときに『仕事だと割り切ってやらなきゃいけない。仕事なんだから、このしんどさを乗り越えろ!』と自分に言い聞かせました。それまでは仕事と思ったことは、これっぽちもなかったですね(笑)。しかし、野球が仕事だと思い出したことが、僕にとってみれば苦痛でした。それが引退につながったのかもしれません」 ――なるほど。 「でも、遊んでいる感覚になれたのは、ロッテというチームのおかげです。ボビー・バレンタイン監督が、そういうチーム環境を作ってくれて、チームがそういう環境にしてくれました。試合が終わった後に歌を歌うなんて、ジャイアンツではあり得ないでしょう(笑)。そういうことを許してくれたロッテだからこそプロとして16年もやれたのかもしれません」 ――その遊ぶ感覚が結果にもつながりましたか? 「2005年にチームが日本一となった最大の要因は、チームの馬鹿さ加減です(笑)。たぶん、日本シリーズで絶対に勝たねばならないと思ってプレーしていた人は僕を含めて一人もいなかったんじゃないですか?(笑)。ほとんどの選手が、福岡のプレーオフでソフトバンクに勝った時点で満足してしまっていました。『おい、おい! 日本シリーズだよ! せっかくだから、やっちゃおうか?』と。そんなノリでした」