「東京にいる時よりも100倍ぐらい明るくなった」波田陽区が移住先・福岡で見つけた幸せ
――移住してみて東京と違う点はありましたか。 波田陽区: 福岡では“一発屋”ではなく、“いちタレント”として扱ってもらえています。東京にいる時は一発屋の仕事がほとんどで、「最高月収は?」「最低月収は?」「最近あった悲しい話は?」という話ばかりでした。そこから抜け出せず、いつも同じことをしている自分に対してもどかしく悲しい気持ちになりました。しかし、地元に近いところに移住して、みんなに優しくしてもらったことで「もっと人に甘えていいんだ」「もっと気楽にやっていいんだ」と素直になれました。 ただやはり、東京の方がギャラは高いと思います。でも、お金云々じゃなくて。今日仕事がある幸せとか、時々家族と行ける外食とか、そのような生活のバランスを考えると、幸福度としては何倍も何十倍も、移住した後の方が最高に幸せですね。
福岡に移住したことで起きた“心の変化”
――福岡ではどのような活動をしていますか。 波田陽区: 福岡での仕事内容は、街ブラやリポートなどです。自分を卑下せずにできる仕事なので、気持ちもリラックスできるし、心の安定感があります。また、今までやったことないような仕事もあり、例えばラジオでは福岡の市長さんや町長さんに会いに行くことも。緊張はありますが、いい経験をさせてもらっています。 ただ、スキルは一切ありません。所詮は波田陽区、「来月同じ仕事があると思うなよ」「調子に乗るなよ」というのは肝に銘じて生きています。できない人間だと分かった上で、自分の精一杯をやる、カッコつけない、背伸びしないという感じです。東京にいた時は、できないくせに気の利いたことを言おうとか思っていました。でも今は、もうスベッたらスベッたで、素直にスベッたと言えるようになりましたね。
――私生活での変化は。 波田陽区: 自分で言うのも気持ち悪いですけど、東京にいる時よりも100倍ぐらい明るくなりました。家族との会話も相当増えたと思います。やはり東京にいる時は、僕が勝手にふさぎ込んでいました。“だめな親父”“使えないお笑い芸人”が家にいるんだと、一人でいじけていたんです。福岡に来てちょっと目線を変えたことで、「もっと人に甘えていいんだ」「もっと気楽にやっていいんだ」と、自分を縛り付けていたことがなくなり、気が楽になったのはあります。 時々自分がテレビに出ているのを見て、「パパ出てたよ」と子どもが嬉しそうに言ってくれるのは、すごく仕事のモチベーションにもつながるし、やりがいにもなります。東京にいる時は、「あんた最近大丈夫?」と心配してくれていた親が、今では地元のテレビで見てくれているというのも嬉しい変化です。 また、最近では、街の消火栓の写真を撮って散歩したり、一人で絵を描いたりもしています。別に消火栓の写真を撮っても仕事にはつながらないですし、自分が楽しいからやっているだけです。もし東京にいたら「こんなことしてる場合じゃねーじゃん」とやっていなかったかもしれないですけど、今は自分の時間もエンジョイできるようになりました。自然があって、子どもと海に行ったり、川でごろんとしたり。何気ないことですが、東京でそういうことをあまりできていなかったので、当たり前の幸せを当たり前に感じられています。