「高齢受給者証」?家系図や病歴?救急搬送された病院で父のことを聞かれても、わからないことだらけ!/父が全裸で倒れてた。#4【作者に聞く】
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をわかりやすくコミカルな漫画で描いてきたキクチさん(kkc_ayn)。なかでも、母親の自宅介護と看取りがテーマのコミックエッセイ「20代、親を看取る。」では、自宅介護の現実や、“親との死別”と向き合う中で複雑に揺れ動く感情が描かれており、同じ経験がある人や親の老いを感じ始めている同世代などから大きな反響を集め、2023年に書籍化された。 【漫画】本編を読む コミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう話だ。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、あの時とは違い、一人っ子として頼れる家族がいない中で様々な決断を迫られることになるキクチさん。いつかは誰もが直面する“親の老いと死”についてお届けする。 今回は、倒れた父が無事に搬送された病院にて、処置を待っている間の様子が描かれる。 ■夜の病院で待つ時間はひたすら長く感じられる 偶然にも、父が普段からお世話になっている病院に搬送されることになったが、依然として予断を許さない状況だ。キクチさんと目が合いホッとしたような様子を見せてから、再び意識が遠のく父親を見て、キクチさんは複雑な表情を浮かべる。 「父は意識が朦朧としている中、私と目が合ってにっこりと笑うと、すぐに眠ってしまいました。私もにっこりと笑いましたが、内心は不安が大きくてうまく笑えてなかったような記憶があります」 病院に到着して安堵したのも束の間、ただただ待つことしかできずにもどかしい時間が流れていく。ここまでにも、救急車が来るまでや搬送先が決まるまでが長く感じられたという描写があったが、夜の病院で1人で待っている時間は特に長く感じられたのではないだろうか。 「病院に着いてから初めて看護師さんに話しかけられるまで1時間は待ちました。救急の待合はとても静かでしたが、同じく待合で診察を待っている方が咳の症状があって、その咳の音だけが響いていました。私は携帯の充電が少なくなっていて、モバイルバッテリーもなかったので、なるべく携帯も使わないようにしていました。ぐるぐると不安だけが頭の中でいっぱいになって、孤独を感じながら待っていました」 病院の受付で父に関することを聞かれても、離れて暮らして久しいこともあり、即座には応えられなかったキクチさん。自宅介護の末に母を看取った経験はあるものの、倒れた時の入院の手続きは父が済ませたので、初めてのことだらけでてんやわんやだ。 「一番困ったのは患者情報の記入です。本人、もしくは普段から同居していないとわからないような質問事項ばかりで困りました。項目の内容は、健康診断の問診で聞かれるような生活習慣や持病、アレルギーなどです。ただでさえ頭がパンクしそうなのに、さらに脳に負担がかかりました。家系図も、父の家系が少し複雑で把握できてない部分も多かったので『これは何のために必要でどこまで書いたら良いんだろう』と悩みました」 病院に運び込まれて一安心だが、父について分からない情報が多いなど前途多難な場面が描かれた「父が全裸で倒れてた」。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。