【解説】「日本車は負けた」…“遅れ”取り戻せる? 2024年、日本のEVの展望は
■日本でEVが進まないワケ(1)…“インフラ整備”
トヨタ自動車は、「マルチパスウェイ」という戦略を取っている。EVのみならず、ガソリン車も、ハイブリッド車も、「全方位」で研究開発を行い、「多様な選択肢」を提供しようとする戦略だ。ただ、あるトヨタ関係者は「はっきり言って、うちはEVで後れを取っている。これからスピード感をあげて巻き返しを図らないと、もっと遅れる」と語気を強める。 また、別のトヨタ関係者は、「EVを頑張らないといけないのはわかっている」としつつも、「なかなか充電施設が普及してこないため、開発したとしても、思ったように売り上げが伸びない」と嘆く。 経済産業省によると、国内で保有されているEVは22万台強。しかし充電施設は約3万口にとどまっていて、普及の妨げになっている。 こうした中、政府は充電施設などの設備投資を行った企業に補助金を出している。2023年度は300億円の予算を投じたが、2024年度は500億円を投じる。また2030年までに、充電施設を30万口まで増やしたい考えだ。 ある経産省関係者も「EV、水素自動車というより先に、充電施設をどうにかして増やさなければ、普及が進むはずもない」と、インフラ整備の必要性を強調する。
■日本でEVが進まないワケ(2)…日系メーカーは及び腰“雇用がなくなる”
さらに、日系メーカーがEVに振り切れない大きな理由がある。それは、EVに振り切れば、今までガソリン車に関わってきた技術者などの雇用が失われることだ。 ある試算では、現在製造されている車をすべてEVに切り替えた場合、30万人もの雇用が失われるという。 トヨタ関係者も「我々には雇用を守るという役割もある。どれだけEV開発が遅れているといわれようと、完全に転換することは考えていないし、やろうとも思わない。いずれ、我々が訴えていたことが正しかったと評価される日が来る」と「全方位戦略」の正当性を主張した。 一方で、ある政府関係者は「例えば“水素エンジン”の開発であれば、既存のエンジン技術は応用できるのではないか。雇用が失われるというなら、研修など、まずは“新しいやり方”を模索するのが大企業の務めだろう。やり方は色々あるはずで、このまま何もしないでは世界から完全に取り残される」と、日系メーカーの“及び腰”に苦言を呈す。
■2024年…どうなる“日本のEV”
乗用車全体のうちEVが25%の割合を占める中国と比べると、日本はいまだ2%にとどまる。しかし、ある経産省関係者は「EVの“次”は、水素やアンモニアなど、次世代エネルギーを用いた車の開発だ」と意気込む。 しかし、日本としてはまず“EVの遅れを取り戻すこと”が先ではないだろうか。2024年は、日本政府だけでなく日系メーカーに対しても、世界で繰り広げられるEV競争への“本気度”が問われる1年になりそうだ。