「幹事長は森山がいい」石破茂に囁いたのは山崎拓元副総裁だった〈永田町の常識に囚われた森山の罪〉
総裁選の翌日、東京・赤坂の衆院議員宿舎で高市と向かい合った石破は総務会長就任を打診した。党四役の総務会長は幹事長に次ぐ要職だが、幹事長のように党運営を仕切るわけでもなく、政調会長のように政策立案に直接関与もしない。周囲から「幹事長以外受けるな」と釘を刺されていた高市は「私は一兵卒としてお支えしますから、私を支援してくれた人を起用してください。城内実さんなんかは経済安保相として適任です」と丁重に断った。石破は会談後、「自分の意見というより、誰かに言わされているような感じだったなぁ」と振り返った。 一時は、高市が希望していた経済産業相と副総理を兼務する案も取り沙汰された。高市は「誰もがやりたがるポジションやね」と満更でもない様子もみせたものの、石破が改めて高市に打診することはなかった。
泡と消えた岩屋官房長官案
官房長官人事でも躓いた。総裁選に勝利したその日に、推薦人代表の岩屋を官房長官、選対で中核を担った橘慶一郎、青木一彦を官房副長官にすることを検討した。副長官2人はすんなり決まったが、岩屋官房長官は一晩で消え去った。森山らが待ったをかけたからだ。 岩屋は防衛相経験者だが、党要職の経験が少なく、政策全般に精通しているわけでもない。さらに問題となったのが、麻生派脱退の過去だ。裏金事件に端を発する派閥存続問題が浮上した際、岩屋は派閥解消を唱えて麻生派を離脱。麻生太郎から勘気をこうむっていた。麻生の最高顧問起用を検討する中、党とのパイプ役でもある官房長官に岩屋を充てれば、鬼門となりかねない。かくして、岩屋は外相に横滑りした。(文中敬称略) ◇ 「文藝春秋」の名物政治コラム「 赤坂太郎 」の全文「 永田町の常識に囚われた森山の罪 」は、「 文藝春秋 電子版 」で公開中です。
赤坂 太郎/文藝春秋 2024年12月号