「骨太の方針」不記載事件で自民の議論低調 党幹部「揉めている余裕ない」
政府が21日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」は、時の政権の政策の方向性を決定する〝羅針盤〟といえる。それだけに書きぶりをめぐって自民党内の議論が紛糾することも珍しくないが、今年は「怖いほど順調に進んだ」(閣僚経験者)。派閥のパーティー収入不記載事件で自民内の結束が揺らぐ中、亀裂が表面化するのは避けたいとの思惑が党内で働いた。 自民の渡海紀三朗政調会長は21日、骨太方針を審議する与党政策責任者会議で「今後を見据えた重要な文書だ。闊達(かったつ)な議論をお願いする」とあいさつした。 自民は今年、所属議員が出席できる政調全体会議を計3回開催。意見を踏まえて修正を加え、17日に大筋了承した。 骨太方針の焦点の一つは、政府が掲げる財政の健全性を示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を維持するかどうかだったが、早々に維持が決まった。 党の積極財政派はPB目標撤廃を主張している。過去には安倍晋三元首相を最高顧問に据えた積極財政派と、麻生太郎副総裁を最高顧問に抱いた財政規律派とが党を二分する激しい論戦を交わしたこともあった。 ただ、今年は不記載事件の影響もあり、「党内でもめている余裕はない」(自民幹部)との認識が広がった。党の政策議論を取り仕切る渡海氏も危機感を共有。5月末には水面下で積極財政派で構成する「財政政策検討本部」の西田昌司本部長と「財政健全化推進本部」の古川禎久本部長に対し、互いの意見をすり合わせるよう指示した。 渡海氏周辺は「『今年ばかりは平場(全体会合)で暴れるな』というメッセージだったのだろう。結果的に党内議論が荒れずに済んだ」と振り返った。 もっとも、岸田文雄内閣の支持率低迷は続いており、9月には自民の次のリーダーを選ぶ総裁選が控えている。 首相が交代すれば骨太方針の路線も変わる可能性があり、ある中堅議員は「今年の書きぶりにこだわる意義はさほどない」とつぶやいた。(竹之内秀介)