松屋がアルゼンチン風ソースハンバーグ定食=チミチュリで食文化外交の輪=在住者レポート=アルゼンチンは今(19) ブエノスアイレス 相川知子
日本の飲食店チェーン「松屋」が、アルゼンチン発祥のソースを使った「チミチュリソースハンバーグ定食」を発売すると5月16日に発表した。松屋ではジョージアのシュクメルリなど各国の郷土料理を期間限定で販売しており、今回で10カ国・地域目となる。白ご飯、味噌汁、サラダが一緒についたチミチュリソースハンバーグ定食は830円。チーズや目玉焼きも付くバリエーションもある。 アルゼンチンの味として知られるチミチュリソースについては、実際には唐辛子が入ることもあるが、この松屋のポスターの色合いほど赤くはない。通常、パセリなどのハーブがオイルに浸っているぐらいの赤さであり、家庭料理なのでバリエーションもある。チミチュリは、牛肉の炭火焼きアサードや腸詰めのチョリッソに添えられることが一般的であり、ハンバーグには添えられることはない。 しかし、松屋が「アルゼンチンの味」を目指して取り組んでいることには、現地側から好意的な反応があるようだ。 チミチュリソースかけハンバーグ定食のお味は 松屋は3月19日にも店舗と期間を限定してチミチュリソースかけハンバーグを提供していた。約2カ月が経過して常時メニューに採用されたことで、アルゼンチンの味が日本で好評を博したことが明らかになったという訳である。 当時はチラシに掲載されたかなり辛いという情報が注目を集め、実際に食べた人からは高い評価を得たという。
ブエノスアイレスに1年滞在し、現代ラテンアメリカ文学が専門の内田兆史(うちだあきふみ)大学教授のコメントが特に興味深い。内田教授は発売当日に店舗を訪れ、松屋のアルゼンチン風チミチュリソースかけハンバーグ定食を試食した。「味噌汁とご飯と共にいただきました。味は? まあ、もちろんアルゼンチンのパセリ、ニンニク、唐辛子、オイル、酢、そのほかのハーブ入りのチミチュリではないし、色が赤すぎるが、うまかった」と述べ、その味わいに肯定的な評価を与えている。 実は昨年ペルー料理「ロモサルタード」が発売され、ペルー人の間ではあれはロモサルタードではない、というコメントがあった。特に豚肉使用のアレンジが違ったようだが、今年4月に「ネギたっぷり牛肉のエスニック炒め定食(830円)」はロモサルタードから「松屋風」にしたと説明があり、にんにくぽん酢やスパイスを絡めているそうだ。 このような反応を受け、南米の料理文化を取り入れた松屋の取り組みに、顧客からの期待と好意的な反応が寄せられていることが伺える。 さらに今回は「目玉焼きのせ」(880円)や「とろ~りチーズがけ」(990円)もあり、また、この赤さはトマトベースで玉ねぎやにんにくが多いためだと説明されている。