Tyla衝撃の初来日を振り返る 南アフリカ文化を背負う次世代スター、サマーソニックで躍動
8月17日・18日のサマーソニックで初来日を果たした南アフリカの次世代シンガー、タイラ(Tyla)。大絶賛された18日・東京公演の模様を、音楽ライター・小松香里と、南アフリカ発祥「アマピアノ」をみずから制作しているaudiot909のクロスレビューで振り返る。 【写真ギャラリー】タイラ@サマーソニック ライブ写真
音と歌と体が一体化した「しなやかさ」(小松香里)
第66回グラミー賞で「Water」が最優秀アフリカンミュージック・パフォーマンス賞を受賞したタイラ。今年5月に開催されたメットガラ2024ではBALMAINによる砂の彫刻のようなカスタムドレスをまとい、初参加にもかかわらず、大きな話題を呼んだことも記憶に新しい新世代のポップアイコンだ。初のサマーソニックのステージであり、記念すべき初の日本でのステージを楽しみにしていた人は多いだろう。 MONTAIN STAGEエリアのステージ上には、前日に行われたサマーソニック大阪と同じく巨大な虎が置かれている。ちなみにタイラのファンダム名はTigersだ。一体これからどんなステージが展開されるのかと、期待感が高まっていく。 「Safer」の涼し気なイントロが響くと、虎の上にステージのようなスペースがあり、座りながら歌うタイラの姿が目に入った。故郷・南アフリカのダンスミュージックであるアマピアノに乗せて、くるくると表情を変えながら歌唱する姿がとてもチャーミング且つ艶やかだ。「Tokyo!」と叫ぶとフロアから大きな歓声が上がった。続いてはベッキー・Gと組んだ「On My Body」。メインステージ上に設けられた複数のお立ち台の上でダンサーが踊る。LEDビジョンには南アフリカを想起させる海が映っている。1番を歌い、メインステージに降り立ったタイラ。後ろを向いて、ダンサーたちと呼応するように腰を突き出し、タイラと言えば!のバカルディと呼ばれる腰を振るダンスを披露して、喝采を浴びる。 「こんにちは!」と日本語で挨拶をした後、日本での初ライブに喜びを露わにするタイラ。満面の笑顔で「You guys are very loud!!」と口にした。先ほどのセクシーなパフォーマンスから一転、無邪気な笑顔を浮かべながらハートマークを掲げる姿はあどけなさすら感じる。この振れ幅もまた魅力だ。「This is my tiger everyone !」と言って虎を撫でる姿がキュート。 「Thata Ahh」ではウィスパー気味に「Thata Ahh」と歌いながらダンサーと絡み合う。ヘルシーな色香を振り撒きながらオーディエンスに投げキッスを送る。続けて、同じく今年のサマーソニック/ソニックマニアに出演していたメジャー・レイザーと南アフリカのMajor League DJzのコラボアルバム『Piano Republik』に収録され、タイラの名を広げた「Ke Shy」を披露。ダンサーたちと一緒にバカルディを披露し、躍動感を高めていく。 タイラがステージ前方に腰掛けると、フロアから絶叫が上がった。「On and On」だ。しかも、アリーヤの「Rock the Boat」とのマッシュアップ。すべての動きが流麗で計算し尽くされたようなのに、動物のような野性味が随所に輝いている。今目の前で繰り広げられているのは故郷・南アフリカのカルチャーを背負ってグローバルシーンの最前線に立つという覚悟を決めた眩いポップスターによるステージなのだ。 「ART」では額のようなものをそれぞれが持ったダンサーたちとタイラが共にステージ上を移動し、フォーメーションを変化させながら、何度も「I’ll be your piece」と悩まし気に歌う。かと思ったら、茶目っ気たっぷりにピースマークを掲げた。ナイジェリア出身のTemsをフィーチャリングした「No.1」から「Truth or Dare」に雪崩れ込むと、大きな歓声が上がった。タイラはダンサーたちと共に踊り、すべての音と歌と体が一体化しているようなしなやかさを見せつける。 Daliwongaの「Bana Ba (feat. Tyla & ShaunMusiQ & Ftears)」のトライバルな音像に合わせて、ダンサーたちがブレイクダンスやアクロバティックなパフォーマンスを披露した後、タイラはメインステージ中央で魅惑的に踊り、一層オーディエンスを虜に。虎の上のステージに移動し、手を振りながらご機嫌なムードで「Tokyo!」と口にして「Breathe Me」へ。オーディエンスもタイラの動きに合わせて掲げた腕を心地よさそうに左右に揺らす。ビジョンには燃え盛るような夕日に照らされた海が映り、「Breathe Me」で歌われる情熱的な愛と呼応しているようだ。 ラッパー・Gunnaとジャマイカ出身のSkillibengをフィーチャーした「Jump」。タイラは自らの体に手を這わせながら官能的に踊った。いよいよこのメモラブルなステージがクライマックスに近づいていることを予感させる中、タイラがステージ前方に歩を進めると「Water」のイントロが響いた。「Tokyo! Last Song! Everybody Scream!」という叫びに続いて、「Make me sweat, make me hotter」と歌うオーディエンスの合唱が響き渡った。水の入ったペットボトルを持ってきたタイラ。大歓声を受けニコリと笑った後、SNSでバズったダンスチャレンジ動画「#waterchallenge」のごとく自らに水をかけながらダンサーたちと一緒に踊る。アウトロで一気にビートが早くなり、タイラとダンサーたちはバカルディを踊る。日本語で「ありがとう!」と言って、ハートマークを作り笑顔で去って行ったタイラ。一瞬たりとも目が離せない45分間だった。