【えん罪被害者】「強盗殺人犯」として29年の獄中生活 再審無罪となり無実を訴える人たちを支え続けた男性 過酷な体験と心からの叫び
無期懲役が確定→証拠開示請求で新たな証拠が
自白は誘導によるものだと、裁判では一貫して無罪を主張しました。しかし、裁判所は自白の調書や目撃者の証言が信用できると判断し、無期懲役が確定します。獄中での生活は29年に及びました。 桜井さんと杉山さんは2度にわたり、再審=裁判のやり直しを申し立てます。そして、弁護団が請求した証拠開示により、検察が隠していた証拠が次々に明らかになっていったのです。
そのひとつが録音テープです。検察は1つしかないと証言していましたが、別のテープがあったのです。そのテープを専門家が分析すると。 ■鑑定を行った音声分析専門家・中田宏さん 「10か所以上の、編集されたであろう跡が検出されました。」 自供の音声は、警察が都合良く編集していた可能性が高いのです。隠されていた証拠は154点にのぼりました。
「隠している証拠を出して」
検察にとって不都合な事実が次々と明らかになり、2011年、再審無罪が確定しました。 さらに、国に損害賠償を求めた裁判では、警察・検察両方の捜査が違法と認定されました。 ■桜井さん 「私たち、えん罪犠牲者が願うのは大したことじゃないんですよね。せめてウソを言うなよ、隠している証拠出してよ、これだけなんです。」
2019年にがんが見つかった桜井さん。それでも病魔と闘いながら全国各地を飛び回り、無実を訴える人たちへの支援を惜しみませんでした。 2023年8月に亡くなった桜井さんの功績をしのぶパーティーが開かれました。そこには「殺人犯」とされて服役し、再審請求の結果を待つ前川彰司さんも参加していました。
■前川彰司さん 「彼が残した足跡というものを、我々は後からついていかなければならない。これは我々の義務だと思います。」 最後にあいさつに立ったのは、桜井さんを支えてきた妻の恵子さんです。
■桜井恵子さん 「地方議会から再審法改正を求める意見書採択が徐々に増えていくことを病床で聞きながら、間違いなく自分の願ってきた方向に流れが動き始めている、そのことを実感しながら夫は旅立っていきました。夫は空の上から、ずっと見守っているんだろうなと思います。」 2024年9月、袴田巌さんに再審無罪の判決が言い渡された日、裁判所のそばには再審開始を待つ前川さんと桜井恵子さんの姿がありました。