星野概念が考えるメンタルヘルスの現在地──「Change is Not Good。そんなときがあってもいい」
『GQ』が掲げるグローバル・メッセージ「Change is Good(変わることはいいことだ)」について、メンタルヘルスの観点から注意を喚起するのは星野概念だ。ミュージシャンという異色の肩書きをもつ精神科医が、心の問題との向き合い方を紐解く。 【写真を見る】精神科医が語る「自分のトリセツ」とは?
「Change」ってなんだろう
「Change is Good(変わることはいいことだ)」は、2022年に世界20の国と地域の『GQ』がグローバル・メッセージとして発表したマニフェストだ。“変化することは良いことであり、より良い未来のために必要である“という考えに基づき、多様性、ジェンダーの平等、持続可能性、そしてメンタルヘルスといった4つの課題に『GQ』が一丸となって、より一層、積極的に取り組んでいくという宣言である。 そして今年3月、世界の『GQ』は「Change is Good Initiative(チェンジ・イズ・グッド・イニシアチブ)」をローンチする。時代のアイコンに注目するデジタルプロジェクト『GQ HYPE』をプラットフォームに、社会的課題に自らアクションを起こし、変化を生み出そうとする各国のチェンジメーカーたちを取り上げる。 『GQ JAPAN』では2カ月にわたって、3名のチェンジメーカーを紹介する。オモテテCEOの高堰うらら、経済思想家・東京大学大学院准教授の斎藤幸平に続いて登場するのは、星野概念。ミュージシャンという異色の肩書きをもつ精神科医がメンタルヘルスを語る。 ──星野さんは、日ごろ精神科医として心の問題を扱われています。そんな星野さんは、まず「Change」という言葉を聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか。 ひと言で「変わる」と言っても、じつにさまざまな視点があるように思います。例えば、誰だってつらさや悩みを抱えていますよね。悩みの大きさや種類は人それぞれですが、いずれも簡単には解決しがたく、慢性的であることが多いと思います。困りごとが緩まる過程は容易なものではありません。そもそも困っていることを気兼ねなく誰かに相談すること自体難しいものではないでしょうか。 自分の悩みを安心して話せるような場があれば、問題そのものは解決しなくても、しんどさとの付き合い方を楽にしていくことができるかもしれません。このように、つらさを抱えながらも豊かさを感じて生きていけるようになることを「パーソナル・リカバリー」と呼びます。こうした変化は、対人的な支援者として関わる日々のなかで実感していますね。