【何観る週末シネマ】カルト的人気ホラーが40年の時を経て日本劇場初公開『チルドレン・オブ・ザ・コーン』
この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『チルドレン・オブ・ザ・コーン』。気になった方はぜひ劇場へ。 【写真】カルト的人気『チルドレン・オブ・ザ・コーン』場面写真【10点】 〇ストーリーネブラスカ州の小さな田舎町ガトリン。一人の少年に突如トウモロコシの神が舞い降り、彼は教祖となった。教祖は手下の子どもたちを率いてカルト化し町中の大人を惨殺、<後光のさす中、神は私の前にお立ちになった>と説いた。そんな子どもとトウモロコシしかいなくなったガトリンに、青年医師と恋人が迷い込む。 〇おすすめポイント スティーヴン・キング原作の短編を大幅にアレンジして映画化したことにより、キング本人からはあまり好かれていないという裏事情はあるものの、それはそれとして観てもらいたい。 日本では『スティーブン・キング/アーバン・ハーベスト』(1995)や『ザ・チャイルド』(1999)、『スティーヴン・キング エイジ・オブ・パンデミック』(2023)など、タイトルは違っていてもソフトスルーなどで断片的には入ってきていたシリーズではあるが、リメイクなどを含めると、実は11作も制作されており、「ハロウィン」や「13日の金曜日」などに並ぶ長寿シリーズだ。 そんな「チルドレン・オブ・ザ・コーン」の1作目。日本ではずっと未公開状態だったのが、40年の時を経て初上映されるというのだから、カルト映画ファンにとっては大事件!! 大人たちが不在となり、カルト宗教によって間違った信仰に向かってしまった子どもたちだけの土地に足を踏み入れた主人公たちに起こる理不尽な出来事のなかで、無邪気と狂気は紙一重、悪意のない殺意の恐ろしさを描いていく。 入口としては、保守的な地方を風刺的に描いた『悪魔のいけにえ』や『サランドラ』のような、見知らぬ地に迷い込んだ系ホラー。しかし、これまで多く制作されている、カルトにはまる大人たちを描いた作品とは違い、襲いかかってくるのが子どもたちというのは、環境によって構築される人間性そのものを見ているような気分になり、違った感情も湧き上がってくる。 純粋で感受性豊かだからこそ、とくに洗脳されやすいのだとしたら、それは作り出した環境が原因であり、救える余地もあるわけで、そう考えてしまうと、うかつに手を出せないのだ。 スラッシャーやスプラッターとして今作を観ると、描写的に弱い部分も多いのだが、視点を変えて観ると、カルト映画ではなく、傑作として名を残していたかもしれない余地が多いにあることに気付くはず。そういった点では非常におしい作品ともいえるが、この機会に、今作が描こうとしている本質に目を向けて、改めて評価してほしい。 今作を配給したフリークスムービーは、今までにも名作ホラー「ヘルレイザー」シリーズを公開してきており、今度は「チルドレン・オブ・ザ・コーン」シリーズを連続公開。2作目『チルドレン・オブ・ザ・コーン2/最後のいけにえ』が8月30日、3作目『チルドレン・オブ・ザ・コーン3/都会の収穫』が9月6日。そして8月23日にも、ヨーロッパのカルトアクション『アクション・ミュタンテ』を公開することで、今作含めカルト映画が4週連続で公開されるという異常事態を企てた。 今度は、どんな作品を仕掛けてくるのか。これまでの渋いラインナップを見ると、もはや期待しかない!! (C)1996 LAKESHORE INTERNATIONAL CORP.ALL RIGHTS RESERVED 〇作品情報1984年/ アメリカ / 93分 / ビスタ / DCP / 原題:Children of the Corn 監督:フリッツ・カーシュ 原作:スティーヴン・キング 脚本:ジョージ・ゴールドスミス 音楽:ジョナサン・エリアス 出演:ピーター・ホートン、リンダ・ハミルトン、H.G.アームストロング、ジョン・フランクリン、コートニー・ゲインズほか キングレコード提供 フリークスムービー配給
バフィー吉川