紙媒体の危機にあっても進化し続ける写真集の現状
インターネットやスマートフォンの普及などにより、逆境に立たされている紙媒体。一般社団法人「日本雑誌協会」が公表している、週刊誌をはじめとする各雑誌協会加盟誌の3ヵ月ごとの印刷証明付きの平均印刷部数を見てみると、各雑誌とも相対的に年々部数は下り坂となっているのが実状だ。
最近の流行は「フォトブック形式」の本
とくに若者の紙離れは深刻な状況と言われているが、そんな中でも企画力を駆使してヒットを目指しているのが、アイドルなどの芸能人を題材にした写真集だ。 ちょっとネット検索をすれば、セクシーな画像が手軽に無料で閲覧できる昨今。まして雑誌などに比べて高価な写真集に関してはかなり厳しい状況が予想されるが、「それでも、各出版社とも内容を充実させたり、切り口を変えてみたり、豪華な特典付録をつけたりと、少しでも題材となっている芸能人のファンに興味を持ってもらい、購買に結びつくように頑張っていますよ」とは大手書店チェーンの社員。 芸能人の写真集事情に詳しい出版プロデューサーは語る。 「最近流行りなのはフォトブック形式の本ですね。元々、写真集はコアなファン層をターゲットにしていることもあって、掲載する写真だけでなく、データ的な要素にも力を入れる傾向にあります。かなりマニアックな内容の質問もぶつける『ロングインタビュー』や『Q&A』などは、まさにファン心理をくすぐる企画と言えるのはないでしょうか」
メンバー・出版社がしのぎを削り合い生まれる相乗効果
そんな中でも、とくに業界内で評価が高いのがAKB48グループ関連の写真集だ。 「オリコン2014年 年間“本”ランキング」の【写真集部門】でも、小嶋陽菜のファーストフォトブック『小嶋陽菜1stフォトブックこじはる』(講談社)が4位、『AKB48総選挙! 水着サプライズ発表2014』(集英社)が5位、『AKB48海外旅行日記3 ~ハワイはハワイ~』(光文社)が6位、元メンバーの大島優子の『脱ぎやがれ!』(幻冬舎)が7位、『指原莉乃写真集 猫に負けた』(光文社)が9位、『松井玲奈写真集 「ヘメレット」』(ワニブックス)が10位と、トップ10内に6作品が入るなど好調な売上を見せているが、その背景にはAKB48グループ自体の人気面もさることながら、写真集自体の内容を高く評価する声は多いという。 「AKB48グループの写真集といえば、以前に『NMB48』の山本彩と渡辺美優紀に写真集の売上を競わせる企画を展開して話題を集めましたが、プレッシャーを感じるのはメンバーたちだけでなく、制作サイドも同様です。2人の対決企画に限らず、AKB48グループの写真集は特定の大手出版社に依存せず、広く門戸を開放し、さまざまな出版社からリリースされています。そのぶん各出版社がしのぎを削り合うことで、各写真集の内容の面でも相乗効果を生み出しているのではないでしょうか。こうした試みは写真集に限らず、新曲のプロモーションビデオの監督にさまざまなクリエイターを起用していることにも重複しています」(前出の出版プロデューサー)