<城が語る>UAEを翻弄したハリルJロンドン世代のスピードとベテランの融合
ハリルジャパンがアウェーでの価値ある勝ち点3をUAEからもぎ取った。ボランチの長谷部が故障で離脱したことによってハリルホジッチ監督が決断した新しいメンバー、システムがはまった。ベテランで固めたディフェンスと、若手のスピードに溢れたオフェンスが融合したのである。 大迫をワントップに左に原口、右に久保を配置した3人の運動量とスピードが圧巻だった。キープ力のある大迫を起点に、原口と久保が積極的に仕掛けた。その仕掛けはまだ雑だが、スピードがあるので何かが起きそうな雰囲気を作る。ロンドン五輪世代の3人は、昨年11月のサウジアラビア戦で新しいサッカー観をチームに誕生させたが、その後、ブンデス、ベルギーでの所属クラブでも結果を出し、フィジカルで当たり負けはせず、その流れのまま、さらに成長したパフォーマンスを敵地で発揮した。 序盤は、UAEのパス回しも早かったが、それ以上のハードワークをしながらシンプルに空いたスペースを見つけスピードダウンすることなく攻めた。本田、岡崎がスタメンに出ると、どうしてもボールを動かすことが遅れるが、彼らの連携は“ノッキング”することもなくスピーディーだった。新しいスタイルである。 その3人に代表復帰した今野が、ボランチというよりインサイドハーフの役割を果たして攻撃に絡んだ。これまでの代表での今野は、どちらかと言えば中盤での“つぶし屋”だったが、所属するガンバ大阪では、長谷川監督の方針で、インサイドハーフとして、攻撃に参加している。代表から2年間離れていた今野だったが、ガンバのスピーディーなサッカーの中で身につけた新しいスタイルと役割を今回、そのままハリルジャパンに持ち込んだ。それがはまったのである。後半7分には、久保のクロスに反応してファーサイドに走りこんできた今野は胸トラップして冷静にキーパーの動きを見て股を抜いた。FW顔負けの決定力だった。 一方、今野に対して山口はアンカー的なポジションで守備に徹した。 中盤での攻防がキーポイントだと見ていたが、UAEは故障者が多く、オマルにボールを集めたい、というのが見え見えだったから、ディフェンスのターゲットを絞りやすかったのかもしれない。アンカーの山口に守備にも回った香川らがうまく出所を潰し、いいボールをFWに入れさせなかった。