【思い続けて15年、エルヴィスにお願いしたある事とは?】音楽評論家湯川れい子“夢のかなえ方”
■初めて歌声を聴いてから15年。ついに夢がかなった
15年かかりました。15年です。歌手活動を再開したエルヴィスが、1960年代後半からラスベガスのステージに出るようになっていて、それが1970年に『エルヴィス・オン・ステージ』という映画になって、日本でも大ヒットするんですね。 それで、音楽評論家の福田一郎先生が「ラスベガスまで行けば、エルヴィスのステージが見られるんだぞ」って仰って、音楽業界みんなで見に行くことになって15人ぐらいのツアーを組んでラスベガスへ行ったんです。その時に、ずっとエルヴィスの担当ディレクターをしていた高橋さんという女性が一緒で、ニューヨークのエルヴィスのレコード会社に電話をかけ続けて、「日本から、日本を代表する音楽ジャーナリストたちがたくさん行くから、エルヴィスに会わせてください」って、ラスベガスに着くまでずっと電話していらっしゃいましたね。そうしたら「では、男性2人、女性2人とお目にかかります」という連絡が来たんです。
■エルヴィスとの初対面は“石けんの匂い”
初めてエルヴィスに会いました。たった10分か15分ぐらいでしたけど。考えていたほどの背の高さではなくて、それでも180センチぐらい。石けんの匂いがするような、すごい清潔感の漂っている人で、全く世間ずれしていなくて。例えば私のような初めての人間に会うのも恥ずかしくて、頬を染めてっていうような。本当に田舎の南部の青年のままのような人でしたね。 本当にわずかな時間だったんですけど、「本当に日本に来ていただきたいです。日本に行ってみたいっていう気持ちはありますか?」って聞いたら、「もちろんあります。僕は日本を武術の面からマーシャルアーツ(武芸)の国として非常に尊敬していて、講道館に行きたい。僕は(空手の)黒帯を持っています」って。そんな話をちょっとしたぐらいですね。すぐに「これでおしまい」っていう声がマネジャーのトム・パーカーから掛かって。一緒にピンぼけの写真を撮って、その時のピンぼけの記念写真があるきりですけど。それが71年、初めて会った時です。