「誰でもよかった」秋葉原無差別殺傷 孤独、不満募らせ、白昼の惨劇 警視庁150年 128/150
《秋葉原で人を殺します》。インターネット掲示板に書き込まれた犯行予告のような投稿。その約7時間後の平成20年6月8日正午過ぎ、歩行者天国でにぎわう東京・秋葉原の交差点にトラックが猛スピードで突っ込み、歩行者5人をはねた。トラックを降りた男は刃渡り約13センチのダガーナイフで逃げ惑う通行人ら12人を次々に襲った。駆けつけた警察官が拳銃を構えると、男はナイフを手放し取り押さえられた。わずか5分間の凶行で7人が死亡、10人が重軽傷を負った。 殺人未遂の疑いで警視庁に逮捕された加藤智大(ともひろ)元死刑囚=当時(25)=は「生活に疲れた。殺すために秋葉原に来た。誰でもよかった」などと供述。静岡県裾野市の自動車工場で派遣社員として働いていたが、リストラへの不安や周囲への不満を募らせ、ネット掲示板に《みんな死ねばいいのに》などといらだちをぶつけていた。 「唯一の居場所」だった掲示板の住民からも《皆を踏みにじったのはお前。友達できるはずがない》などと突き放され、孤独感は増大。積み重なった社会への不満が犯行の動機とされている。 翌21年1月には銃刀法が改正され、ダガーナイフを含む刃渡り5・5センチ以上の両刃ナイフの所持が禁止となった。ネット掲示板への犯罪予告の書き込みの取り締まりも強化された。 加藤元死刑囚は殺人などの罪で起訴され27年2月最高裁で死刑が確定。令和4年7月に死刑が執行された。39歳だった。 広島・マツダ工場の無差別殺傷事件や京都アニメーション放火殺人事件など、秋葉原事件に影響を受けた事件も発生。疎外や孤立を感じ、交流サイト(SNS)で恨みや不満を増幅させ、無差別に人を巻き込む事件は後を絶たない。(塚脇亮太)