「翌日に“大ゲンカ”ですよ」田中史朗が語るエディー・ジョーンズとの初対面…あの大金星はフミさんの衝突から始まった「僕はリーチを推しました」
2023-24シーズン限りで引退した元ラグビー日本代表・田中史朗(39歳)。小さな身体で世界と渡り合ってきたスクラムハーフに、改めて17年間の現役生活を振り返ってもらった。インタビュー全2回の前編では、“鬼軍曹”エディー・ジョーンズとの出会いや2015年W杯でリーチマイケルを主将に推した理由を明かしている。《後編につづく》 【画像】「めちゃ若い…でも今と全然変わらない!」23年前のフミさん(伏見工業)から髪の毛フサフサ新人時代の貴重写真…「オールブラックスのハカの前でなぜか相撲ポーズをとるフミさん」「大男に飛び掛かる“仰天タックル”」も見る(70枚超) 田中史朗。 ラグビーワールドカップ(W杯)3回出場。彼がラグビー界から引退したいま、その笑顔を見ると、どうしても「フミさん」と呼びたくなってしまう。 引退しても田中はいそがしい。この6月、日本代表ヘッドコーチ(HC)のエディー・ジョーンズに乞われて、日本代表の合宿で自らの経験を語った。 「日本代表としてプレーできるのは、あなたたちだけなんですよ、そのことを誇りにして欲しいと話しました。おまけにチームディナーの乾杯のコールもさせてもらいました(笑)。テーブルではトレーニングスコッドの若い選手たちと話をしたんですが、彼らはちょっと大人しかったですね。コーチ陣から『リアクションが薄いかもしれない』と聞いてはいたんですが、ラグビーはコミュニケーションのスポーツなので、とにかく反応していこうと話しました。反応すること、話すことが信頼を生むことになるので」 合宿だけではなかった。イングランド戦の前日に行われたジャージ授与式では、プレゼンターの役割を担った。ジョーンズHCがその役割を田中に託したのは、彼が日本代表の歴史の一部を担ってきたからだ。
「ジャパン」の特別な想い
田中の代表歴は2008年から2019年まで、足掛け12年におよぶ。それはどん底に喘いでいた日本代表が、世界から尊敬を得るまでの過程そのものである。実際、田中自身の代表への思いはひと一倍強い。 「伏見工業の時に高校代表にも選ばれてたんですが、国際情勢の影響で僕たちの代は遠征がなかったんですよ。はじめて日本の代表としてプレーしたのは、U19でした。それまでの経験とはまったく違っていて、感情が高ぶりました。いまの若い選手たちにもその誇りを感じつつ、ラグビーを楽しんで欲しいと思ってます」 田中がはじめて日本代表のキャップを獲得したのは、2008年5月、アジア5カ国対抗のアラビアンガルフ戦。HCはオールブラックスのレジェンド、ジョン・カーワンだった。日本はカーワン体制で2011年のW杯に臨んだ。 「振り返ってみると、2011年W杯はチームとしてのマネジメントが整備されてなかったのかなと思います。プールステージの4試合を2つのチームに分けて戦うことになりました」 日本はフランス、ニュージーランド、トンガ、カナダの順番に対戦することになっていたが、開催国であるニュージーランド戦で日本はメンバーを大幅に替え、主力選手をメンバー登録しなかった。勝ち目の薄いオールブラックスとの試合より、3戦目のトンガ戦こそ「マストウィン」、落とせない一戦という意図でレギュラークラスを多く外したのである。結果はニュージーランドに7対83と完敗、トンガにも18対31で敗れてしまう。 「AとBに分かれてしまった感じでした。僕はAに入っていたのでモチベーションは上がっていたんですが……。いま思うとチームの一体感は出しづらかった気がします。それに、普段から日本人と外国人のグループに分かれてしまっていて、全員がひとつの目標に向かっていくという姿勢は2015年、2019年に比べて低かったですね。 そんな状況でしたが、僕らのオアシスだったのが通訳の中澤ジュリアさんで、コーチが選手たちに『こんなことならもう帰れ』と英語で言ったら、ジュリアさんが『そのようなプレーしかできないのでしたら、荷物をおまとめになって、お帰りください』と、やたら丁寧な日本語に通訳してくれるので、みんな笑いをこらえられなかったのもいい思い出です(笑)」
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