空飛ぶクルマは「10年後には間違いなく一つの移動手段」、進む空のモビリティ革命、AirX社の描く未来図を創業者に聞いてきた
鉄道会社との連携やヘリポート開拓も
並行して、AirXは、鉄道会社との連携も進める。例えば、2019年に西武ホールディングスと東京と各地のプリンスホテルを空で結ぶ輸送・遊覧を展開。第一弾は、新木場の東京ヘリポートと下田プリンスホテル間およびザ・プリンス箱根芦ノ湖間で実施し、第二弾は軽井沢プリンスホテルへの輸送と現地での遊覧飛行を実証として始めた。さらに、2021年10月には京急電鉄と資本業務提携を結んだ。 手塚氏は「鉄道会社としては、沿線人口が減ることが予想されるなか、沿線以外の施設でのインバウンドや富裕層の取り込みで、空の移動に注目したようだ」と話す。 さらに、同時進行で全国でヘリポートの開拓も進めた。輸送実績を重ねていくうちに、離着陸地を整備すると需要を増やせることが分かったからだ。手塚氏は「地権者や地元事業者と話を進めながら、夜の遊覧や観光で使える離着陸地を増やしていった。それに合わせて利用者も増えていった」と振り返る。
訪日客に人気の遊覧プラン
AirXは、観光でのヘリコプター活用にも力を入れている。数々のヘリコプター遊覧飛行プランを用意。東京のみならず、大阪、横浜、富士山、北海道、沖縄など全国で展開している。例えば、東京タワー、東京スカイツリー、レインポーブリッジなどの上空を巡る15分のヘリクルージングは、1人2万2000円からと気軽に利用できる料金設定で提供している。 現在、月間で搭乗者の4割~5割が訪日客。日によっては、8割~9割にもなるという。特に富士山へのクルーズは、ほぼ外国人。手塚氏は「インバウンド搭乗者の増加率は、インバウンド旅行者全体の伸びを超えている」と明かす。 一方、日本人搭乗者は記念日など特別なイベントとしての利用が多く、カップルやファミリーがボリュームゾーン。ただ、高価な乗り物というイメージや安全性の懸念も根強いことから、「国内マーケットの拡大が課題」(多田氏)との認識だ。 また、遊覧飛行だけでなく、宿泊を合わせた商品プランの造成にも意欲を示す。手塚氏は「着地での滞在時間が延びれば、その地域の経済効果にもつながる。単に早く移動できるだけでなく、その先に付加価値をつけて、体験価値を上げていきたい」と話す。 そのためには、着地の宿泊施設や二次交通としてのタクシーなど地域事業者との連携が重要との考えだ。多田氏は「地域で何かしらのストーリーを持っている事業者と連携し、お互いの価値を高めていくとともに、利用者の人生観が変わるような旅を創出していきたい」と意欲的だ。 AirXは、旅行業登録もしていることから、将来的には自社での商品造成や催行も視野に入れている。