観測史上最大の大雨から1週間 判明した浸水被害は当日発表分の10倍に 産業への打撃も深刻 「インフラ整備だけでは限界」と異常気象に県最南端の島悲鳴
鹿児島県与論町に11月初の大雨特別警報が発表され、観測史上最大の24時間雨量594ミリを記録してから16日で1週間になる。床上・床下の浸水被害は当日発表分の10倍の293件(15日現在)に膨らんだ。野菜を中心に農業被害額が8863万円(同)に上り、今後も増加が懸念される。製糖工場が浸水し、例年12月中旬に始まるサトウキビ搬入、操業開始が見通せない。 【写真】水に漬かったモーターを分解して洗浄する従業員=14日、与論町茶花の与論島製糖与論事業所
9日未明から明け方に奄美地方南部などで線状降水帯が次々と発生した。同町では同日午後4時までの48時間に、年間平年値の約3分の1に相当する609.5ミリの雨が降った。人的被害はなかった。 浸水被害の内訳は住家242、事業所41、非住家10。満潮後で潮位が高い時間帯と雨のピークが重なり、中心部の茶花地区で被害が拡大した。 同地区は2018年6月の大雨時も浸水。氾濫した茶花排水路に迂回(うかい)路や地下水路を整備してきたが、住宅や商店が集まっており、これ以上の改修は困難という。 町は今後、同地区で浸水した場所に目印などを付ける方針。総務企画課の龍野勝志課長は「インフラ整備だけでは限界がある。記録に残し、防災意識の向上につなげたい」とする。 重点作物のインゲンや里芋、ニガウリは10、11月が植え付け時期になる。根腐れなどインゲンが農業被害額の5割近くを占めた。産業課の堀田哲也課長は「土作りからやり直さなければならない。出荷が遅れて他産地と競合し、値崩れしないか心配」と話す。
畜産農家は牛の冬用の粗飼料が流されるなどし、コスト増が見込まれる。同地区で牛23頭を飼育する林年充さん(77)は「牛舎の床上2.3メートルまで水に漬かり、わらが泥まみれで食べさせられない」と嘆く。 同地区の与論島製糖は地下の機械や電線、床上の電気室が水浸しになった。主電源を入れられず、今期約2万2250トンと見込まれる搬入、稼働に向けた15日の試運転を延期した。 中野貴志・常務取締役与論事業所長(48)は「モーターを分解して洗浄、乾燥させている。できるだけ早く復旧させ、試運転にこぎ着けたい」と語った。
南日本新聞 | 鹿児島