100万円でタイニーハウスをDIY。ノンフィクション作家が6年かけて9.9平米ロフト付きの小屋を作るまで 川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』
ヘリンボーンはカット済みの木材を送ってもらい組み立てるキットも売られているが、川内さんは自分たちで床材を加工するところから始めた。
「効率的にやる方法もあるけど、時間をかけて出来上がることを選択しました。ヘリンボーンの床は木材の端が直角に交わらず、折り合うように重ねるので組み方が難しいんですよ」 川内さんのもう1つのお気に入りは、テレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』に憧れてつくったロフトの小さな窓だ。目黒通りにある注文家具店でガラスと木材を注文し、指導を受けながら川内さん自身がデザインから考えた。
「『アルプスの少女ハイジ』に登場するハイジの寝室の丸い窓に憧れていたんですよね。だから構造上は必要ないんですが、ロフトには最初から窓を付けようと決めていました。窓から山並みを眺める時間は、最高です」 イキイキと話す川内さんに「セルフビルドで一番楽しかったことは何か」を尋ねた。 「できていく喜び、ですかね。『ここまでできた』という達成感があるんです。つくることは楽しいけど、全部が全部楽しい作業ではないですね。考えたことが形になっていく工程が面白いんじゃないでしょうか」
完成した小屋には、春や秋の過ごしやすい時期に月に1度は赴くという。 「夏は行ったり行かなかったり。冬は気温がマイナス10度になってしまうので行かないんです」 現地では、忙しく小屋仕事をしているそう。 「木造なのでメンテナンスをしないと傷んじゃうんです。無垢の木材やウッドデッキは年に2回は塗装しています。それだけでも半日仕事なんですよ。それに敷地を整えたり、やることは山ほどあります。普段はパソコンで仕事することが多いから、体をのびのびと動かすいい機会になっています。たくさん動いたら、仲間と家族で焚火を囲んで食事する。いい気分転換になります」
「自分で何でもつくれる」という手応えを経て変わった価値観
DIY未経験から、セルフビルドで小屋をつくるまでの背景には、どんな思いがあったのか。 「『買わなくても、自分で何でもつくれると思えたら、最強じゃないか』と思ったんです。人によってはそういう思いが野菜づくりなどに向けられるんでしょうけど、私の場合はDIYに向かいました。自分で自宅をいじれたら面白いだろうなって思っていたんです」 小屋づくりを終えてからは、自宅のテーブルを継ぎ足して幅を変えるなど、気軽にやれることが広がってきたと話す。 「実家に母と妹が住んでいるんですけど、そこのリフォームも続けています。本来なら大工さんやリフォーム会社に頼むところを、自分たちで進めていけるので面白いですよ」