100万円でタイニーハウスをDIY。ノンフィクション作家が6年かけて9.9平米ロフト付きの小屋を作るまで 川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』
セルフビルドで感じた「形ができていく喜び」
川内さんの小屋づくりは、伸び放題の草を刈り、土地をならし、基礎をつくるところから始まった。 「最初の作業は肉体労働が大半で、本当にしんどかったです。材料は重たいし、基礎に必要なパーツは大きいし、家具をつくるのとは全然違う。それでも最初のころはやる気があるから、なんとか完成させられました」 基礎が完成した先は、DIYで家を好きなようにアレンジする感覚に近いのだそう。 「こだわりを詰め込んで理想を追求しつつも、現実に打ちのめされながら実行していくんです」 話を伺っているとどの作業も大変そうに聞こえるが「小屋をつくっていると仲間が増えていくので、作業は楽になっていきますよ」と語る。 確かに川内さんのエッセイでは、小屋づくりに関わる仲間たちがどんどん増えていく。大工の丹羽さんや建築家のタクちゃんといった専門家から、時には小屋づくりに興味を持った子どもたちまで参加していくのだ。ノンフィクション作家で人脈があるのかと聞いてみると、そうではないという。 「小屋をつくっていることを話すと、『手伝いたい』と言ってくれる人が続々と現れるんです。家をきれいにする参考にしたいとか、大工仕事が好きで手伝いたいとか。作業には興味ないけど、楽しそうだから見に来たいという人もいます。人手が足りない時は、誰かに話してみるのも一つの手だと思います」 小屋づくりに関わるのは、川内さんの友人だけではない。近隣の人が声をかけてくれることもあったという。 「うちの草刈り機を使った方が早いよ、と貸してくださることもありましたね。それにセルフビルドをやっている方々からどういう風に施工したか、教えてもらうこともありました」 小倉ヒラクさんの知り合いで温泉・旅館を営む人から、資材をもらったこともある。 「昔の民家が取り壊される時に、貴重な資材をレスキューしている方なんです。それでいろんな材料をいただきました。でも古材だと厚みが違って加工が難しいんですよね。バラバラの質感でも問題ないウッドデッキをつくるのに使いました」 現地でも人の縁に恵まれているのには、理由があった。 「私たちが現地で受け入れてもらえたのは、土地を持っている小倉家の人たちが地域の人たちから信頼されているからだと思うんです。彼らはこの地に移住してきたんですけど、丁寧に交流を重ねているんですよね。私たちはその信頼を借りているだけだと感じました」