ゲームやアニメ効果で続く刀剣ブーム 日本刀に魅了され専門博物館で働く英国人男性の思い
ゲームや漫画、アニメなどの効果もあり、「刀剣ブーム」が続いている。海外でも日本刀への注目が集まる中、備前長船(おさふね)地区(岡山県瀬戸内市)の「備前長船刀剣博物館」で多言語支援員を務める英国人男性がいる。トゥミ・グレンデル・マーカンさん(28)。「いつかはここで働きたいとの願いがかなった。千年以上受け継がれてきた歴史の重み、数々の伝統工芸が集約され、五感で味わえる魅力を伝えていきたい」と意気込んでいる。 【写真】トゥミさんの豊富な専門知識を生かした英語による解説文 ■インバウンドのガイド 博物館に隣接する工房で毎月第2日曜の午前と午後に行われる「公開古式鍛錬」にトゥミさんの姿があった。たたら製鉄の工程の一つで、ふいごで送風する炉内で原料の玉鋼を熱し、3人の刀工が真っ赤になった玉鋼をつちで繰り返したたき、鍛錬した。 トゥミさんは見学する外国人グループに対し、刀工の説明や作業の様子を手ぶりを交えて伝えていた。 多言語支援員の役割は団体バスツアーや古式鍛錬見学の外国人へのガイド、展示解説の英語キャプションの作成、交流サイト(SNS)による国内外への発信などだ。 同館の塩田勇館長は「日本刀は専門用語が多く、説明するのが難しい。例えば、焼刃の形を指す刃文のうち、粒子が少し粗いのを沸(にえ)、くもりガラス状の肉眼で見えにくい粒子を匂(におい)と呼ぶなど、一般的な言葉がなかったり意味がかけ離れている場合があり、知識がないと正確に伝えられない」と指摘する。 同館は鎌倉時代中期から昭和初期まで連綿と続いた刀工「長船派」の拠点、長船地区に昭和58年、日本刀常設展示のある長船町立博物館として開設され、合併で瀬戸内市ができた平成16年に日本刀の専門博物館に生まれ変わった。 戦国武将、上杉謙信の愛刀として知られ、旧長船町に拠点があった刀工「福岡一文字派」が生み出した国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛(さんちょうもう))」をはじめ、備前の刀を中心に約400振りを収蔵し、常時約40振りを展示。山鳥毛は年1回の展示公開期間がある。 ■鍛冶、武器に魅せられて