マー君の復帰戦を支えた新魔球とは
右手首の炎症と右前腕部の張りで故障者リスト(DL)入りしていたヤンキースの田中将大投手(26)は、現地時間3日(日本時間4日)敵地のセーフコ・フィールドでのマリナーズ戦で先発復帰し、7回を投げて3安打、1失点、9奪三振の素晴らしい投球で今季3勝目を手にした。 最速は154キロ。地元メディアや監督、コーチらも、不安を打ち消すピッチング内容に絶賛の嵐だが、マー君は、重要な復帰戦で右打者にスライダーを「フロントドア」として使う新球を試していた。初お目見えで威力を発揮したスライダーの「フロントドア」は、肘に不安を抱えているマー君にとっての救世主となるか。
ア・リーグを代表する4番のバットはピクリとも動かなかった。テシェイラの16号ソロで1点のリードをもらった2回裏。先頭打者に、打率.330、18本、打点39のマリナーズの主砲、クルーズを迎えたが、スライダー、ツーシームで、簡単にカウントを追い込むと、インサイドの体にぶつかってくるようなボールゾーンから曲がってくるスライダーで三球三振。左打者に対して体に当たるようなボールゾーンからストライクゾーンに入ってくるツーシームは、「フロントドア」と呼ばれているが、右打者に対する右投手のスライダーを使った同様のコースに曲げていくボールも「フロントドア」と呼ばれる。 新球のスライダーの「フロントドア」は、この1球だけではなかった。3回に失投を捉えられての連続長打で同点に追いつかれた直後、なお残るピンチで、ズニーノをそのスライダー「フロントドア」で、またも見逃しの三振、二死となって、ジャクソンにも、136キロの「フロントドア」で、バットを振らせずに三振に取った。6回一死からモリソンを見逃し三振にしたのも、この新球。カウントを追い込まれた打者が手の出ない理由は、一瞬、ボールと思えるほどのキレがあるからに他ならない。 78球目となる最後のボールが、154キロをマーク。確かに力感のあるストレートこそが素晴らしかったが、同時に、スライダーを使った右打者への「フロントドア」も魔球ばりの威力を発揮した復帰戦だった。