真面目な親が陥る“闇バイト”の温床になる子育て 親は子供にとって「指示役」になってはいないか?
そんなトモヤが親に対して感情をぶつけたのは中学2年生のときだ。授業で使う持ち物を忘れて困っていると、隣の席のマナが何も言わずそっと貸してくれた。 「さっきは、ありがとう」 すまなそうに声をかけると、マナはにっこり微笑んで「ううん、全然。困ったら言ってよ」と言ってくれた。その後も、よく気づかって助けてくれるのだった。トモヤにはマナが天使のように思えた。 「来週、みんなでショッピングモールで遊ぶけど、トモヤくんも来るよね? ゲームセンターとかカラオケとかあるんだって」
マナが誘ってくれたのは嬉しかったが、あの父親が許すはずがない。家に帰ってから携帯でマナに「ごめん。うちの親めんどくさくて。勉強しろってうるさいし、そういうの難しいかも」とメッセージを入れた。 「そっか。厳しいんだね」 マナは否定することなく、話を聞いてくれた。それ以来、トモヤは毎日のようにマナとメールでやりとりをした。マナに恋心を抱いていたトモヤは、それが幸せなひとときだった。 ところがある日突然、父親から「マナと付き合うのはやめなさい」と言われた。
「えっ……?」 ■母親の行き過ぎた監視 絶句していると、「そんなことをしている暇があったら勉強しろ。ここのところ成績がよくないじゃないか。わかったな?」 そうたたみかけるように言って、去っていった。 なぜ父親はマナのことを知っている? トモヤは親に好きな女の子の話なんてしたためしがない。学校でも、マナとの交際を知っている人はほとんどいない。まさか、携帯を盗み見ているのか。 トモヤは怒りに震えた。そして両親のいる部屋に行き、わめいた。
「勝手にオレの携帯見てるんだろ! 親だからって、そんなことしていいのかよ!」 母親は、トモヤの携帯をチェックしていることを認めた。いかがわしいサイト、危険なサイトにアクセスしていないか監視するのに飽き足らず、どんな友だちとどんな会話をしているのかを確認していたと。 父親は一笑に付した。 「トモヤのためを思ってやっていることだ。親として当然の権利じゃないか」 トモヤは絶望した。この人たちには何を言ってもムダだ。マナとの関係もぎこちなくなり、自然消滅してしまった。