『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)
プルス・ウルトラの創設者たち:テスラ
もう一人のテスラは、ウェスティングハウス社と開発した二相交流発電機が、1893年の「シカゴ万博」に採用されている。この交流送電に関しては、直流派であったエジソンとの電流戦争(劇中でも少し触れている)が有名で、『エジソンズ・ゲーム』(17)や『テスラ エジソンが恐れた天才』(20)といった、映画の題材になっている。 またテスラは、無線で地球上のあらゆる場所に電力を送り届ける、無線送電システムの構想を抱き、実際ニューヨーク州ロングアイランドに、ウォーデンクリフ・タワーを建設して実験も行った。だがテスラは、地震兵器や霊界通信装置(*1)といった奇想を語るなど、マッドサイエンティストとして語られることも多い。そこで、「もし、この霊界通信装置が成功していたら」というのが、プルス・ウルトラの根拠になったのだろう。 *1 実際は、エジソンも霊界通信機を研究していた。また電球や映写機のように、本当はエジソンが発明したものではないものも少ない(電球はフィラメントの改良、映写機は他人のアイデアの購入)。映画事業では、ジョルジュ・メリエスの海賊版を作って儲けるなど、トンデモさんとしては、エジソンの方が色々と性格的にヤバい人物だったと言える。
あらすじ⑥
ニックスは三人を、かつてフランクが発明したという“モニター”(巨大な尖塔の横に球体が浮いている形状)(*2)に案内し、浮遊する円盤に搭乗して球体の中に入って行く。ニックスはケイシーに、「このモニターは超光速粒子タキオンを捕らえ、過去でも未来でも見ることを可能にしている」と説明する。機械の構造を一瞬で理解してしまうケイシーは、今度もすぐにモニターの操作方法を理解した。そして、自分が解体工事を妨害していた、ケネディ宇宙センターの第39A発射台の未来を確認する。すると、それは次々と壊されていくが、ある時点で画面全体に激しいノイズが入ってしまう。 ケイシーがさらに時間を進めると、核攻撃や暴動、各種の自然災害などによって、世界が崩壊していく様子が映し出される。フランクは、それが「58日後に起きる現実だ」と伝える。ケイシーは、「なぜ人々をトゥモローランドに移住させないの?」と質問するが、ニックスは「あの野蛮な連中を招けば、ここもまた地球同様になるだけだ」と答える。ケイシーが「まだ悲劇は始まっていない。私は認めないからね!」と反論すると、モニターに破滅を逃れた世界の映像が一瞬だけ表示される。フランクはニックスに確認を促したが、ニックスは彼を眠らせてしまう。 目を覚ましたフランクは、そばで塞ぎ込んでいるケイシーに気付く。彼女は、「なぜ真実を知りながら、自分の頭にウソの映像を送り込んだの!」と怒っていたが、そのことから「あのモニターは、地球の人々に悲観的な未来のイメージを送り続けていたのよ!」と気付く。三人は、ニックスにそのことを報告するが、彼はまったく反応しない。なぜならニックスが、意図的にやっていたことだったからだ。 彼は、「人々の脳に、世界の終焉が近いというイメージを伝えれば、危機感を持って対処するだろうと考えた。しかし実際は逆で、彼らは滅亡の予感を貪り食い、映画やゲームなどで消費するだけだった。人類は良い未来を作るための行動を起こさず、単に諦めたんだ。悪いのはモニターじゃない。人間だよ」と言って、三人を地球の無人島へ追放しようとする。 *2 劇中に登場するモニターの外観は、1939年の「ニューヨーク世界博」のテーマパビリオンである、「トライロン&ペリスフィア」の形状がモチーフになっている。