『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(後編)
なぜエッフェル塔なのか
ストーリーを真面目に考えるなら、「転送装置があるのだから、直接行けば良いではないか」となるだろう。しかし、脚本を担当したデイモン・リンデロフは、あえて登場人物たちをエッフェル塔へ立ち寄らせた。このことも本作のサブテーマが、博覧会の歴史と関係していることを意味している。 そもそもエッフェル塔は、フランス革命100周年を記念して1889年に開催された、「第4回パリ万博」のシンボルタワーだった。引き続きエッフェル塔は、博覧会史上空前の規模となった、1900年の「第5回パリ万博」(https://en.wikipedia.org/wiki/Exposition_Universelle_(1900))(https://www.youtube.com/watch?v=2Y6xXWq1Tik)でも中心的な存在となる。この時は電力の普及により、7,000灯の照明が取り付けられた。その後、解体される予定だったが、軍事用の電波塔としての活用法が提案され、取り壊しを免れて今日に至る。
プルス・ウルトラの創設者たち:ヴェルヌ
劇中では、エッフェルとエジソン、ヴェルヌ、テスラらが「プルス・ウルトラの創設者たち」と説明されている。エジソンが、この場所で暮らしていたエッフェルを訪ねたのは歴史的事実で、実際エッフェル塔内に蝋人形も設置されている。しかし、テスラとヴェルヌに関してはフィクションだ。 実はヴェルヌも万博との縁は深く、彼は1867年に開催された「第2回パリ万博」を訪問している。この博覧会には、プロンジュール(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB_(%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6))というフランス海軍の潜水艦模型が展示されており、ヴェルヌはここから直接ヒントを得て、三年後に小説「海底二万里」を出版している。 ちなみに「海底二万里」はディズニーによって、『海底2万マイル』(54)として映画化されるが、この時に造られたセットの一部が、1955年に開業した「ディズニーランド」(現ディズニーランド・パーク)のトゥモローランド・エリアにおけるアトラクション「20,000 Leagues Under the Sea(海底2万マイル)」として再利用された。 そして、ヴェルヌ最大のヒット作である「月世界旅行」だが、これも1901年にニューヨーク州バッファローで開催された「パン・アメリカ博覧会」(https://en.wikipedia.org/wiki/Pan-American_Exposition)のアトラクション「A Trip to the Moon」(https://www.youtube.com/watch?v=VftK_YBfq2c)に影響を与えている。これは、世界初のシミュレーションライドであり、現在の「スター・ツアーズ: ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」の御先祖様である。だが、「A Trip to the Moon」のデザインは“空飛ぶ船”といった感じで、ヴェルヌが考案した砲弾式宇宙船とはかなり異なる。 「スペクタクル」もさすがに砲弾式ではなく、古典的なロケットとして描かれた。それでも、わざわざ月の近くまで立ち寄るのは、「月世界旅行」へのオマージュだというのは明らかだ。