國學院大「101回目のプロポーズ」って何のこと?…出雲で見えた箱根駅伝“総合優勝”の現実味「“3番以内”に逃げない」「メンバー争いの方が怖い」
昨シーズンから、國學院大の前田康弘監督が繰り返し口にしてきた言葉がある。 「101回目のプロポーズじゃないけど、勝負するのは来年なので。本当に優勝のチャンスがあるのは次だと思ってます」 【写真】「ほ、細すぎじゃない…?」國學院のエース・平林清澄の168cm、44kgの“超軽量ボディ”…はしゃぐ原監督に叫ぶ大八木監督、山の神に黒縁メガネの大迫傑も…箱根スターの名場面も一気に見る(90枚超) かつて一世を風靡した「月9」ドラマのタイトルに喩えながら、監督は1年後の躍進を見据えていた。101回とは次の箱根駅伝の第101回大会を指す。つまり、今シーズンにより充実した戦力が整うことを端から見越していたのだ。 だからだろう、大学駅伝の緒戦である出雲駅伝を5年振りに制しても、監督に浮かれた様子は見られなかった。 「物語としては出来過ぎだけど、今年が勝負の年なのはわかっていたので。とにかくチームとして勝ちに行こうと。今回『オレはもう逃げないから』ということも言ってます。“3番以内”という言葉に逃げないで、今年はどの駅伝も獲るつもりでやるからなと。どんな相手が来ても負けねえぞ、ブレずに行くぞって。選手がよくそれを実践してくれましたよね」
格上相手に大健闘の2年生エース
その言葉通り、出雲駅伝では國學院大の選手の粘り強い走りが印象に残った。 各大学の監督が口を揃えて「出遅れ厳禁」と注視した序盤で、実力者の青木瑠郁(3年)と山本歩夢(4年)が区間3位、区間5位と好走。エース区間の3区では、出雲駅伝初出場となる2年生の辻原輝が青学大の黒田朝日(3年)、駒澤大の山川拓馬(3年)といった格上相手に食らいつき、トップ駒澤と20秒差の3位にまでチーム順位を押し上げた。 実績でははるかに上回る相手だが、辻原はまったく臆することがなかったという。 「僕、中学高校とあまり実績がなくて、ずっと格上相手に挑んでは負けるっていうレースを繰り返してきたんです。地元の神奈川県でもずっと2番で……。だから今回も挑むことに怖さはなかったです。むしろワクワク感の方が強くて、たとえ負けても絶対に次に生かすレースをするぞって。今日は少しでも粘れという監督からの指示だったので、次こそはお前の区間で勝つぞといってもらえるように頑張ります!」 辻原の怯まない姿勢は、後続のランナーにも良い影響を与えた。4区を担った野中恒亨(2年)は三大駅伝のデビュー戦だったが、区間賞を奪う活躍で首位の駒澤大に9秒差まで迫った。 痺れるような展開の中、ときに笑みを浮かべながら伸び伸びと走ることができたのは、本人いわくこんな理由からだった。 「辻原が本当に良い形で襷をつないでくれて、監督が事前に言ったとおりの展開になりましたし、そもそも僕が焦ったところで負けるチームではないので。先輩方が強すぎて、むしろ練習の方が緊張感がある。メンバー争いの方が怖かった印象があるので、もうこの大きな舞台でも走ることを楽しむだけでした」 5区の上原琉翔(3年)も区間賞の走りで続き、チームはついにトップに立つ。真骨頂はエース平林清澄(4年)の大会史に残るような激走だった。 平林は今年2月の大阪マラソンで初マラソンの日本最高記録(2時間6分18秒)を作った実力者だが、4秒差で追ってくる駒澤大の篠原倖太朗(4年)もまた、ハーフの日本学生記録(1時間00分11秒)を持っている。さらに24秒差で青学大の駅伝男、太田蒼生に追われるという厳しい展開の中、篠原との併走状態が続く中盤からロングスパートを決め、持ち前のスピード持久力を生かして最後まで主導権を渡さなかった。
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