無風選挙が続いていた「東京で2番目に小さな市」国立市の市長選挙、久しぶりの風は吹くか
(フォトグラファー:橋本 昇) 筆者の地元、東京都で2番目に小さな市である国立市に、いまちょっとした風が吹いている。12月7日に告示された市長選挙である(ちなみに一番小さいのは狛江市だ)。 【写真】「がんばってくださいね」と声をかけるのも高齢者だ 今回の選挙では現職で3期目を目指す永見理夫氏(75・無所属、自民、維新、公明、都民ファースト推薦)に対して、新人のはまさき真也氏(40・無所属)が名乗りを上げた。戦いはこの2人による一騎打ちとなった。 ■ 久々に熱を帯びる市長選 はまさき氏は地元の一橋大学を卒業して国土交通省に入り、まちづくりプロジェクトなどの仕事を担っていたという。確かに、40歳という若いはまさき氏の登場にはインパクトがある。市民団体は若い風に期待し、連日のように市内各所で討論会が開催された。 はまさき氏の攻勢に危機感を持った現職の永見氏も選挙カーを繰り出して市内を駆け巡っている。 こんな市長選挙はひさびさだ。思い起こせば1999年――というから今から25年前、通称大学通りの高層マンション建設に対する反対運動が盛り上がっていた中で行われた市長選挙で、反対運動のリーダーであった上原公子氏が現職を破って当選した。あの時も風が吹いた。 その後の上原市政2期と後継の関口博市長の時代には市議会では数々のすったもんだがあった。市民が市長を訴えるなどの問題も起きていた。 だが、2011年に市役所出身の佐藤一夫氏が自民・公明・みんな3党の推薦を受けて市長に当選して以来、市長選は事実上無風状態になっていた。現職の永見市長も市役所の出身で、佐藤氏の死去に伴い後継市長に選ばれたという経緯だ。
■ 東京で2番目、全国でも4番目に「小さな市」 国立市は面積8.15平方キロメートルと全国で4番目に小さな市だという。確かにちょっと散歩をしているとすぐに隣りの市に出てしまう。 人口は7万3655人、選挙人名簿登録は6万4494人。穏やかで住みやすい町だが、やはり現役世代の人口減少などの問題は抱えているらしい。今回の市長選挙ではそのあたりが論点だ。 はまさき氏は、地域経済の活性・景観と住み心地の維持・子育て教育への支援を3本の柱として国立の新時代をひらくという。一方の永見氏は2期8年の実績を強調し、安定した市政を継続するという。つまりは変革か安定かという選択なのだろう。 はまさき氏の演説を聞きに国立駅南口へ歩いた。空っ風が冷たい。思わず身震いした。大学通りの銀杏並木の葉っぱが風に踊っていた。今日は谷保天満宮主催のクラッシックカーのパレードをやっているらしく懐かしい車が駅前ロータリーを次々に走っていく。のどかな選挙戦だ。 思えば今年の選挙は荒れた。都知事選挙における小池知事の学歴詐称問題と候補者の大量出馬、総選挙では自民党の裏金問題からの非公認や離党勧告で大物議員の落選。私が見に行った八王子の演説会場も凄かった。戒厳令のような警備体制で戦車でも出てくるのかと思うほどだった。私服刑事や制服警官が念入りに点検し、果ては警察犬まで登場、クンクン臭いを嗅ぎ回っていたのには驚いた。 演説予定の30分前になるとちらほらと記者やテレビカメラマンが集まりだした。彼らはお行儀よく自分たちで取材位置を決め脚立を据える。警備などは一人も見当たらず、直ぐ近くの駅前交番の警官は机に向かって欠伸をかみ殺している。もちろん警察犬など来るはずもなく、飼い主のお供でやってきた痩せたプードルが寒そうにブルブル震えていた。