「リニア推進」候補が知事選当選 姿勢転換? 環境への配慮は? 長野県内も静岡県の対応注視
静岡県知事選でリニア中央新幹線の工事推進を掲げる鈴木康友氏が当選したことを受け、長野県内の行政関係者は27日、静岡工区の着工を認めなかった川勝平太前知事からの取り組み姿勢の転換に期待した。リニア工事の影響が続く地域では川勝氏の環境保全を重視する視点も忘れないでほしい―との声も聞かれた。 【図】品川―名古屋間 リニア中央新幹線のルート地図はこちら
■沿線自治体の首長「事業前進へ最善の努力を」
「川勝前知事が提示した水問題といった課題の解決策を見つけることが推進につながる」。鈴木氏は投開票から一夜明けた27日、浜松市で記者団の取材に応じ、リニア対応についてそう述べた。
リニア工事が続く飯田市の佐藤健市長は取材に「(川勝知事時代は)どんな形になれば静岡工区の着工にゴーサインが出るのか分かりづらかった」と述べ、鈴木氏に環境保全分野での論点を明確にして対応するよう注文した。
リニアは川勝氏が南アルプストンネル静岡工区の着工を認めなかったこともあり、JR東海が2027年の品川―名古屋間開業を断念。佐藤市長はリニア工事が南アの環境に与える影響は関心事としつつ「どういう項目がクリアされるべきなのかを改めて整理していただき、一つ一つ明確にする形で進むことを期待したい」と話した。
阿部守一知事も工事が推進されるよう取り組んでほしい―と強調。工事による岐阜県内での井戸水位低下といった課題を念頭に、「長野県も環境保全や発生土への対応に向き合ってきた」とし、「静岡県も関係者と協議を進め、事業が進むよう最善の努力をしていただきたい」と述べた。伊那市の白鳥孝市長は鈴木氏について「バランスの良い方。リニア推進の立場で明るい見通しがあると思う」とした。
■住民「環境重視の視点忘れずに」
飯田市上郷地区では、長野県駅(仮称)や住宅地の下を通る風越山トンネルの工事が進む。「上郷地域まちづくり委員会」の北原重光会長(68)は「静岡県知事が誰になっても、足元の工事を早く完了してもらうことしかない」。27年開業断念に伴う工事長期化の懸念の他、同トンネルは地下水の流れを分断するルートで計画されているとして、「トンネルから離れても影響が出る恐れがある。被害が出たらJRには補償をしてもらわないと困る」と訴えた。