G-DRAGON「復活の一年」を総括 K-POP史を塗り替えた歩み、カムバックとこの先の未来
カムバックで示した圧倒的な存在感
このように、リリースのたびに大衆とアジアの音楽業界から大きな反響を得てきたのがG-DRAGONのソロワークだが、兵役の期間を挟んで7年もの空白期が開くこととなった。ここ数年は毎年のようにアルバムの噂が聞こえてきていた中でようやくリリースされたのが、新曲「POWER」だった。2017年の6月から数えると、約88カ月ぶりのカムバックということになるらしい。「88」は1988年8月18日生まれのG-DRAGONを象徴するシグネチャーナンバーだ。 パワフルなビートにウィットに富んだGDらしいリリックが乗るという「らしさ」は健在だが、トラックはかなり削ぎ落とされた印象だ。今作は今年韓国で音源配信サービスとしては2位という、劇的な増加を見せているYouTube Musicで数時間で急上昇1位にあがり、Melonでは即日リアルタイムチャート1位、デイリーで2位と現役で大衆から注目を集め、聴かれるアーティストであるということを証明して見せた。 勢いのままに11月21・22・23日の三日間行われたアジア最大の音楽授賞式MAMAでは、全身ピンクの衣装に身を包んだソロと合わせて現BIGBANGメンバー3人でのステージを披露し、「KING OF KPOP」の冠の通り観客だけでなく出演者のプレゼンターやアーティスト達も魅了するようなパフォーマンスで、フィナーレをこの上なく盛り上げた(TAEYANGの衣装は全身黒、D-LITEの衣装はピンクと黒で何故かBLACKPINK)。 MAMAとG-DRAGONといえば、有名なのは2014年のステージだろう。ラップのリリックで「ここは馬鹿どものための年末の祭り」「大きな賞が用意されてる/喧嘩しないように分けてくれる」「俺はもうBIGになって腹一杯だから/弟たちに分け前を」と、暗にMAMAという授賞式のあり方自体をdisしたのだ。今年の受賞スピーチでも、「子どもたちが喧嘩しないように直接賞を分けてくださるおかげで、このような特別な賞がもらえた」と当時のリリックを引用していた。ともすれば炎上しかねない行為だが、大衆的にはむしろ今でも「流石」という目線で見られている節があるのは、G-DRAGONというアーティストが音楽表現を通して築いてきたイメージやパフォーマンスへの信頼度があってこそだろうし、MAMAの側も許容できているということなのだろう。 先行シングルやMAMAでのステージ披露により、長期間のブランクに関わらず現在も韓国内での絶大な支持と存在感を証明したG-DRAGONだが、こうなると続く新譜への期待も自然と膨らまざるを得ないだろう。古巣のYGエンターテインメントから離れた現在、個人としてはSAMSUNGが所有するGalaxyコーポレーションに所属しており、最近ではアメリカ西部最大のヒップホップ・R&B専門レーベルとして知られる独立系レコード会社EMPIREとパートナーシップを締結するなど、今後はよりグローバルな活動も期待できそうだ。
DJ UTAKATA