北朝鮮軍の戦闘参加で戦局への影響見通せず ウクライナ軍に「脅威」も練度と連携に問題か
米国務省が12日、ロシアに派遣された北朝鮮軍部隊が前線での戦闘に参加したことを明らかにした。1万人以上とされる北朝鮮軍の参戦は、兵力損耗が進むウクライナ軍の「脅威」になるとの見方が軍事専門家の間では強い。ただ、北朝鮮軍の練度を疑う声や、現場での露軍との連携の乱れを示唆する情報も出ており、現時点で北朝鮮軍の参戦が戦局にどの程度の影響を及ぼすかは不透明だ。 ■露は契約兵確保も困難に プーチン露政権は軍の死傷者増加を受け、2022年9月に予備役を招集する「部分的動員」を発動した。しかし、国内に混乱と動揺が広がり、以降は高額報酬を約束した契約兵で兵力を補充してきた。ただ、最近は契約兵の確保も困難になりつつあるとの観測が強い。こうした中、ロシアは手っ取り早く兵力を増強するため、北朝鮮に派兵を要請したとみられる。 ウクライナの軍事専門家クザン氏は地元テレビで、露軍はウクライナ軍に一部を占領されている露西部クルスク州に北朝鮮軍を投入することで、同州奪還作戦に従事させてきた露軍部隊の一部を主戦場のウクライナ東部に転戦させることができると指摘した。東部で露軍の兵力が増強された場合、兵力で劣るウクライナ軍の劣勢がさらに加速する公算が大きい。 クルスク州では、9月に奪還作戦に着手した露軍とウクライナ軍による戦局の膠着状態が続いてきた。 ウクライナの軍事専門家セレズニョフ氏は「北朝鮮軍はクルスク州の戦況を根本的に変える可能性がある」と危惧した。 ■露軍現場部隊は上層部方針に不満か ただ、こうしたシナリオは、北朝鮮の派遣部隊が露軍部隊と協調して作戦を遂行できる精鋭であるとの想定に基づくものだ。北朝鮮軍部隊の「質」を巡っては疑いも生じている。 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は10月下旬、映像や当局者情報に基づく分析として、ロシアに派兵された北朝鮮軍部隊は10~20代とみられる若者が多い上、体格も貧弱で、「精鋭部隊ではない可能性がある」と指摘した。 韓国の情報機関、国家情報院(国情院)も、北朝鮮軍は無人機(ドローン)などが使用される現代戦への理解が乏しいと説明。韓国の金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防相は、戦場で北朝鮮軍部隊が「弾除け」程度の役割しか果たせないとの見方を示した。