「最も炎上した映画は?」世界から批判殺到の過激作(3)まるで地獄絵図… 人間の醜悪な欲望を記録した問題作
映画は万人が楽しめる娯楽の王様である。一方、影響力が強すぎるため、世間の規範から外れた作品に対しては、上映中止を求める抗議運動が吹き荒れたりする。今回は、タブーを踏み越えてしまったがために、世界各国で上映が禁止された問題作を紹介。露骨な性描写で物議を醸した作品から宗教上の理由でバッシングを受けた映画まで幅広くセレクト。今回は第3回。(文・寺島武志)
『ソドムの市』(1975)
原題:Salo o le 120 Giornate di Sodoma 製作国:イタリア 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ 脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ、セルジオ・チッティ 原作:マルキ・ド・サド キャスト:パオロ・ボナチェリ、ジョルジョ・カタルディ、ユベルト・P・クィンタバル、アルド・バレッティ、カテリーナ・ボラット 【作品内容】 本作の舞台は、1944年、イタリアが連合国に降伏した後、ヒトラー占領下の北イタリア町サロ。亡命政権(イタリア社会共和国)を形成していた、生き残りのファシストたち。大統領(アルド・ヴァレッティ)、大司教(パオロ・ボナチェリ)、最高判事(ユベルト・P・クィンタバル)、公爵(ジョルジョ・カタルディ)の4人は、自分たちの快楽のために、条例を新しく制定し、それに従って美少年・美少女が集められ、さらにその中から彼らの厳選した男女各9人が、秘密の館に連れ去られる。そして、その傲慢な権力を背景に一大狂宴を計画するのだが…。 【注目ポイント】 現在社会とファシズムへの批判を込めたといわれる本作だが、その描写は、“ソドミー”と呼ばれる男性同士の行為をはじめ、“スカトロジー”と呼ばれるプレー、さらには全員を処刑すべく、少年・少女の目をえぐり、髪を剥ぎ、なぶり殺しにする地獄絵図だ。この様子を双眼鏡で覗きながら自慰にふける男たち…。目を背けたくなるようなこの世の終わりのような展開だ。 パゾリーニ監督は、映画の製作を終えて間もなく、暴行を受けた上に車で轢かれて謎の死を遂げている。もともと反ファシズム思想の持ち主だったため、ネオファシスト党による犯行と思われているが、実際のところ、真犯人は不明だ。 過激な表現が多く、欧米をはじめ、世界46か国以上で上映禁止となった。監督の死の真相も含めて、スキャンダラスな遺作となった作品でもある。 1976年の日本公開前にはノーカットで試写会が行われ、良くも悪くも話題を呼んだが、上映館が少なかったことも関係し、ヒット作とはならず、ひっそりと劇場公開された後、2015年、制作40周年記念としてHDニューマスター版が発売された。
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