J1昇格PO準決勝。名門・東京ヴェルディの復活を加速させる5つの「P」とは
竹本GMが続ける。 「一度もPKを与えていないということは、選手たちが正しい判断のもとでアプローチしているからです。全員が集中力を保ちながら、ペナルティーエリアのなかでは我慢して止まって、相手を追い込んでいく。そうした積み重ねですよね」 結果として総失点は昨シーズンの「61」から「49」へと改善された。キャプテンのDF井林章(27) は、ロティーナ監督による改革が進んでいたシーズン中に こんな言葉を残している。 「隣や前後の選手との関係を常に意識したなかで、自分たちが取るポジションが決まる。以前は1対1で負けない、目の前の相手を潰すことを意識していましたけど、いまはチームとしてどこのポジションを守り、どのタイミングでそのポジションを崩していくのかを考えさせられる。 対戦相手の攻撃陣が裏に来るスタイルなのか、足元にもらってコンビネーションで崩してくるスタイルなのかによって、自分たちが前からプレスをかけにいくのか、まずは後ろのケアをするのかという異なる守り方を、毎週のように繰り返しています」 ただ、守っているだけでは勝てない。試合中に「4‐3‐3」と「3‐5‐2」を巧みに使い分けられるようになったヴェルディは、総得点も昨シーズンの「43」から「64」へとアップ。そして、攻撃面の改善に大きく寄与したのがイバン・パランコ・サンチアゴヘッドコーチ(37)だ。 ロティーナ監督とは2014シーズンから2年間、カタールのアル・シャハニアSCでもタッグを組んだ師弟関係にある。ヴェルディ監督就任への条件として パランコ氏の招へいを要求している。 2009年から2012年までFCバルセロナスクール福岡校のテクニカルディレクターを務めたパランコ・ヘッドコーチの指導で、本家バルセロナの伝統でもあるポゼッションが浸透した。再び竹本GMが言う。 「ボールを保持して回していても、相手ゴールに向かわなければ意味がない。だからこそ、プログレッション(前進)なんです。シュートやゴールにつながるボール回しとポジションに対する考え方。それらをテーマにしたトレーニングで技術的にも改善され、戦術的にも統一されてきた」 たとえば ドウグラス・ヴィエイラ(20)とアラン・ピニェイロ(25)のブラジル人FWは、昨シーズンは2人合計で9ゴールだった。個人とチーム全体のポジショニングが改善された証として、今シーズンは一転して前者が18ゴール、後者は17ゴールを量産。新生ヴェルディを力強くけん引した。