将来的に不安だから今、別れて…「リスクヘッジ離婚」増加の背景とは? 我慢が限界突破する前に離婚するのはお得なのか
熟年離婚になるくらいならリスクヘッジ離婚はおすすめ
「リスクヘッジ離婚は積極的におすすめしたい」と後藤氏はいう。 「結婚生活に不満や我慢がたまっているなら、従来の結婚制度に固執して離婚をためらうのはもったいないです。近年ではマッチングアプリで新しいパートナーに出会う方も増えていますし、事前にしっかり準備して離婚調停に臨めば、ほとんどの場合、3年以内に離婚が成立します。特に若い世代では、財産分与で揉めることも少ないですし、たとえ揉めたとしても、長い人生で貴重な時間を無駄にせずに済むのは大きなメリットです」 また最近、増えている、婚姻期間が20年以上の夫婦や50代の熟年離婚でもリスクヘッジ離婚はおすすめなんだとか。 「離婚時の財産分与や年金分割で揉めたり、一人で生活できないため離婚に応じなかったりするケースもあります。我慢の限界に達しているのに、生活の不安から離婚できないという方も実は多いんです。 さらに熟年離婚の場合、年齢的にも離婚後に次の仕事を見つけるというのは困難で、経済的に厳しい状況に陥りがちです。我慢の限界に達する前に離婚が選択できる環境があるならば、“リスクヘッジ離婚”を検討してみてもいいですね」
相手が離婚に応じない…和解には生活費3年分を負担する場合も
夫婦間で埋めきれない溝が発生する前に、リスクヘッジ離婚できるのであれば、円満な形で縁を切ることもできるだろう。 ただし、子どもがいる場合、リスクヘッジ離婚は子どもに大きな精神的ダメージを与える可能性がある。また離婚すれば、片方の親が経済的に厳しくなるケースも多く、離婚を後悔する可能性もゼロではない。 そして、不倫やDVといった明確な離婚理由がない場合、離婚を切り出された相手が離婚に応じないこともあるだろう。原因が性格の不一致だけでは、離婚成立が難しいのが現状だ。 「明確な離婚理由がないと相手は納得できないことがほとんどですので、すぐに離婚が成立するわけではありません。離婚調停が長引くと、少なくとも1年程度は時間がかかり、離婚調停から離婚訴訟に移ることもあります。 リスクヘッジ離婚の場合、明確で具体的な離婚原因がないため、離婚訴訟に負ける可能性はあり得ることです。訴訟に負けてしまうと3~5年程度、次の訴訟期間を待たないといけないため、最悪のケースではかなりの時間がかかることも考えられます」 では離婚原因が明確でない場合はどうすればいいのか? 「別居期間が3年程度になると離婚原因として認められ、一般的に離婚が可能とされています。この場合では、相手の生活費を3年分支払うことで和解することが多く、お互いの収入にもよりますが、大体300万~400万円程度工面する必要があるため、金銭面的にも大きな負担となるでしょう」 ただリスクヘッジ離婚を切り出したい側からすれば、3年なんて待ってられないだろう。なので、離婚調停が長引くことを想定して金銭を準備し『3年分の生活費、400万円を工面するので別れてください』と先に提案して、すんなりと離婚したいものだが……。 「最初、相手は離婚相場がわからず『400万円程度なんて少なすぎる』と主張して、提案には応じないと思います。ですが、いざ訴訟になって裁判所から勧告を受けると、相場はこんなものかと納得するかもしれません。こういうケースで、リスクヘッジ離婚の交渉をする際には、なにをどう切り出すか、タイミングが重要になってくるので弁護士と相談することをおすすめします」 取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/shutterstock
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