2024年大学10大ニュース 年内入試の拡大、私大定員割れ
3.国立大学の授業料値上げ問題が議論に
24年3月に、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会の特別部会で、委員の一人である慶應義塾の伊藤公平塾長が「国立大学の授業料を150万円程度に引き上げるべき」と主張し、その後に東京大学が25年度の学部入学者から授業料を約10万7000円値上げし、64万2960円にすることを表明したことで、大学の授業料のあり方がこれまでになく議論を呼んでいます。 国立大学の授業料は、標準額の53万5800円で、05年度から約20年間、据え置かれています。1.2倍の64万2960円まで、各大学の判断で引き上げることができることになっていますが、学部の授業料を値上げしたのは19年度の東京工業大学(現・東京科学大)と東京藝術大学が初めてで、その後、千葉大学や一橋大学など4大学が続いていました。 一方、日本の大学では学生の8割が私立大学に在籍し、授業料は平均約96万円(23年度)と国立大学とは大きな差があります。日本私立大学連盟の資料によれば、学生1人に対して国が出している助成金は、国立大学は私立大学の11.2倍です。私立大への国の助成金が著しく少なく、私大連は「この違いが教育格差、経済格差を生んでいるのではないか」と指摘しています。 「朝日新聞Thinkキャンパス」では、国立大学協会会長を務める筑波大学の永田恭介学長と、私大連会長を務める早稲田大学の田中愛治総長の対談を行いました。田中総長は「私立に負担を強いてきたことも考え直さないといけないと思う。国立大学の財政は限界だから授業料を上げることは必要でしょうし、貸与型ではなく返済不要の給付型の奨学金を用意すべき」と話し、永田学長は「もし全国の国立大学の授業料を一律150万円に引き上げたら、所得の低い県では家計支出の約7割に相当してしまう」「高度な教育を行うためには財源を増やさなくてはならず、そのお金をだれが負担すべきなのか、国民的な議論が必要」と話しました。