『モアナ2』もともとは配信シリーズだった 映画化にあたり変化したポイントは?
公開2週間で世界興収がすでに6億ドル(約900億円)を突破し、日本でも公開3日間の週末興行収入と動員数ランキングともに堂々の1位を記録した映画『モアナと伝説の海2』。2024年の洋画作品でNo.1のオープニングという、日本に歴史を刻む超特大ヒットスタートを切った本作だが、実ははじめは、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で配信されるシリーズとして制作されていた。しかし今年の2月にウォルト・ディズニー・カンパニーCEOのボブ・アイガーが劇場公開作品として再構成することを発表。そんな本作について、監督のデイブ・デリック・ジュニア、ジェイソン・ハンド、デイナ・ルドゥー・ミラーに、米ロサンゼルスにあるウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで話を聞いた。 【写真】『モアナ2』の装飾がかわいい! 取材が行われたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ 前作『モアナと伝説の海』は、2023年に全世界でストリーミング配信サービスの最も視聴された映画No.1となり、「ディズニープラス」でも現在までに驚異の10億時間再生を超えるなど、公開後から時間が経った今も世界中で愛され続けてきた。『モアナと伝説の海2』が、めでたく映画化され劇場公開されたのは、作品の強い人気も後押ししたのだろう。ミラーは「映画館で公開されるようになったのは本当にうれしかったです。これにより、さらに規模が大きくなり、ユーモアをもっとおかしくして、それに合わせて歌も変えて、大きなスクリーンで見ていただく価値のあるものに変えました」と振り返る。 また映画化を決断したアイガーは、本作のどこを気に入ったのか。ハンドは「アイガーは、海やセーリングがすごく好きで、太平洋やいろいろな島々に訪れているらしいです。僕たちも映画を見た皆さんが太平洋の島々に逃避行するような気分になってくれるとうれしいです」と話す。 そんな本作の舞台は、16歳の少女モアナの冒険を描いた前作から3年後。ミラーは、本作でモアナの成長や変化を描きたかったそうで、「1作目ではウェイファインダー(導く者)として、初めて一人で海に出ていく姿を描きました。それから、この3年という期間を与えることで、彼女がいかにリーダーとして成長したかという点にフォーカスしたかったんです」と明かす。 また新たなキャラクターを登場させるためにも3年という月日が必要だったそう。中でもモアナの妹のシメアは「本当に素晴らしい」と監督陣もお気に入りのキャラクターだ。実はシメアはデリック・ジュニアの人生からインスピレーションを得て生まれたのだとか。「僕の娘は21歳なんですけどサメアという名前で、彼女には年の離れた弟がいるのですが、二人の関係がモアナとシメアのインスピレーションになっています。このような関係が、ディズニーのアニメに登場したことは今までなかったのではないでしょうか。シメアの存在が、モアナのコミュニティーにおける立ち位置の変化をより強調するのです」と話す。 それから変化といえば、モアナの新コスチュームも印象的だ。モアナは今回、白のワンショルダートップスに、赤のスカートを着用。デリック・ジュニアはその理由について「モアナは素晴らしいアクションヒーローで、帆走技術を見せたり、岩をのぼったりと、さまざまなことをするので、今回はモアナの行動に適した服でなければいけませんでした」とコメント。「それと同時に第1作目のコスチュームのインパクトが強かったので、それと同じくらいのルックを作るのも今回の課題でした。髪の毛など、アニメーターたちは本当にいろんなことを考えて、頑張ってくれました」と仲間たちの仕事を称えた。 今回モアナは、人間を憎む神によって引き裂かれた人々のつながりを取り戻すために危険な航海へ出る。その姿勢は分断や対立が進む現実世界のわたしたちにも響くものがある。ミラーは映画づくりにおいて「一番大切にしているのは、“キャラクターにとって意味の成すことを語る”ということです」と言う。「今回のモアナがリーダーになったり、クルーを率いたり、コミュニティーを大きくしようとしたりするのは、どういうことなのか。それは国境を超えても皆さんが理解してくれる話だと思います。みんなが力を合わせた時に、人々は強くなり、物事はより良くなる。そのようなことを語りたかったのです」。 前作でアップデートされたプリンセス像を見せたモアナは、『モアナと伝説の海2』で、新たな課題に直面し、さらなるパワーアップを見せている。その姿は、劇中のみならず、葛藤や不安を抱えた観客たちの次の一歩をも導いてくれることだろう。(取材・文・写真:阿部桜子) 映画『モアナと伝説の海2』は全国公開中。