時計愛好家を魅了し続ける「5大ブランド」 歴史と伝統に技術があわさった奥深き世界
世の中には、たくさんの「3大○○」が存在する。時計の世界にも「3大○○」があって、永久カレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーターを指す「3大複雑機構」が有名だ。この3大についてあれこれ異論をはさむ人はいないが、「3大時計ブランド」については、さまざまな意見があるようだ。 【写真を見る】「5大時計ブランド」の代表作や工房などを見れば、その歴史や伝統、技術の高さが体感できる かつて「3大時計ブランド」といえば、「パテック フィリップ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」「オーデマ ピゲ」であった。しかし高級時計の市場が成熟し、時計に対する知識レベルが上がってくると、こっちのブランドもすごいぞ、あのブランドだってすばらしいじゃないか。という意見が出てくるようになる。
そこで現在では、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲを「3大“スイス”時計ブランド」とし、そこにフランス発祥の「ブレゲ」とドイツ発祥の「A.ランゲ&ゾーネ」を加え、「5大時計ブランド」とするのが一般的になりつつある。 さて、この5大時計ブランドだが、時計愛好家でなければ、その名前すら聞いたことがないかもしれない。なぜならどのブランドも生産本数が少なく、販売される店舗も限定的。一見さんが簡単に購入できるものではなく、しかもかなり高価でもある。
しかしそれでも、世界中の時計愛好家を魅了しているのには理由がある。ブランドごとに、魅力を解説していきたい。 ■最も歴史が古いのは「ヴァシュロン・コンスタンタン」 5大ブランドの中で最も歴史が古いのは、ヴァシュロン・コンスタンタンだ。創業は1755年で、ジュネーブのキャビノティエ(卓越した能力を持つ時計師のこと)であった、ジャン・マルク・ヴァシュロンの工房がブランドの始まりとなる。 【写真】「5大時計ブランド」の代表作や工房などを見れば、その歴史や伝統、技術の高さが体感できる(37枚)
現存するジュネーブ最古の時計ブランドであり、ジュネーブの時計文化を継承するために、1886年に定められたジュネーブ州の時計の品質規格「ジュネーブ・シール」に準拠した時計を作っている。 この規格は技術面や機能面、精度だけでなく、時計の美的側面にも厳しい基準が設けられており、例えばムーブメントを構成するパーツは、角を落として磨く“面取り”を行うだけでなく、側面にヘアライン仕上げを入れることで輝きのメリハリを作らないといけない。こういった仕上げを微細なパーツにも行うことで、時計の完成度を高めている。