山口恵以子「家の中の安全のため、数回に分けて断捨離も。仕事で収入があるからこそ、介護も実家の大規模修繕も乗り越えられた」
最愛の母の他界、兄の在宅介護――。作家・山口恵以子さんの生活は年々変化してきていると言います。その時々の問題に向き合って、大規模リフォームや断捨離に取り組んできました(構成=村瀬素子 撮影=小山志麻) 【写真】母の遺影を飾った《祭壇》 * * * * * * * ◆母の着物は残して服は定量を保つ 家の安全でいうと、建物だけでなく部屋の中も大事。障害物をなくしスムーズに動けるようにするために、かなり断捨離をしました。ここ数年で何段階かに分けて、物を処分しています。 まず兄の物は、2トントラック1杯分捨てました。広告業界で働いていた兄はなんでもこなせて、ギターの腕はプロ級。仏像彫刻、スキーと趣味が広かったから、物も多くて。趣味関係はギター2本だけ残しました。 洋服もいまはリビングで着替えをするので、リビングのクローゼットに収まる程度に減らして。 1階の物置部屋の物も処分して、猫のトイレや餌を1ヵ所にまとめました。といっても、猫たちは家中を走り回っていますが。引っかくわ、パソコンのキーボードの上に乗って仕事の邪魔をするわ、困ったものですが、私にとっては心の癒やしであり、生活の潤滑油。 大人だけの暮らしって話題がないでしょう?猫がいるから笑いも会話も生まれて、兄と2人きりの生活にも耐えられるのです。
母の物もだいぶ整理しましたが、着物と桐箪笥は残してあります。かつての母の部屋は、母の遺影を飾った《祭壇》と私の着物部屋に。 以前は、私の着物は天井収納で、梯子を登らないと取り出せませんでした。足を踏み外したら危ないので、和服用の箪笥を買って帯や小物を収納しています。前は着物の準備をするのが憂鬱だったけれど、いまは「明日何を着ようか」と選ぶのも楽しい。家の中を整えることは心の安寧にも影響します。 私の服もだいぶ手放しました。1枚買ったら1枚処分、と定量を保つようにしています。でも母から譲られた着物や、昔自分が苦労してお金を貯めて買った物は捨てられないですね。うちには書斎というものはなく、3階にある私の部屋が仕事場であり寝室。本の資料、ベッドなどを一部屋にまとめています。 兄との2人の生活ですが、べったり面倒を見ているわけではありません。兄は、週3回人工透析に行って昼間はいませんし、1日おきに身のまわりの世話をしにヘルパーさんが来てくださる。週2回は訪問入浴を依頼。 多くの方の助けを借りて、私は仕事に集中できるのです。私に限らず、介護する人はなるべく介護サービスを活用して、自分の時間を作ったほうがいいと思いますね。 リビングの介護ベッドでテレビを観たりして過ごしている兄ですが、認知症状や体調には波があります。でも時々普通に言葉が出てくることもあったり。私は、兄に夕飯を食べさせたあと、このダイニングテーブルに陣取って、テレビを見ながら晩酌(笑)。一日の疲れをとる至福の時間です。