隆の勝（左）を押し出しで破る大の里（撮影・鈴木正人）

＜大相撲秋場所＞◇5日目◇12日◇東京・両国国技館 　成績次第で大関昇進の可能性がある関脇大の里（24＝二所ノ関）が、無傷の5連勝で、優勝争いの単独トップに立った。東前頭筆頭の隆の勝を、小細工抜きの馬力で押し出し。今場所12勝で到達する「三役で3場所33勝」の昇進目安まで、あと7勝とした。この日は横綱審議委員会（横審）の本場所総見で、山内昌之委員長は将来の横綱候補として期待。女子ゴルフの大里桃子も、今季復活優勝の一因に大の里の活躍を挙げるなど、影響力は相撲界にとどまらなくなってきた。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　大きな体と、スケールの大きな相撲に、周囲の期待感は高まるばかりだ。大の里が、底知れない強さで初日から5連勝を飾った。相手は先場所、優勝を横綱照ノ富士と決定戦まで争った隆の勝。そんな実力者に、休まず攻めて完勝した。のど輪で上体を起こされかけても、まわしを取れなくても、前に出ることをやめなかった。技術はまだまだ。それでも規格外の圧力で圧倒し、単独先頭に立った。 　先場所は敗れていた相手だが「考え過ぎず、1日一番に集中した」と、淡々と話した。この日の取組後は何を聞かれても「1日一番に集中」と繰り返した。小結だった5月の夏場所は、12勝を挙げて史上最速の所要7場所で初優勝。関脇だった7月の名古屋場所で9勝し、大関昇進目安の今場所12勝へあと7勝とした。 　本場所総見で観戦した横審の山内委員長は、大関を通り越し、将来の横綱への期待を口にした。「夢を見たい。夢とは、きちっとした横綱の誕生。大の里は、その候補の1人であることは間違いないし、片りんを見せている」。好角家をして「夢」と言わしめた。 　活躍は相撲の枠を飛び越え、他のアスリートにも影響を与えた。大の里の優勝から2週間後の6月、国内女子ゴルフツアーで、3年ぶり復活の3勝目を挙げた大里はその1人。「名前が似ているので、勝手に親近感を覚えて応援していました。そうしたら最速優勝。『すごい！』と、私も刺激を受けて優勝できました」と明かしたことがあった。 　これには大の里は「ちょっと分からないです」と、ピンときていない様子だった。ただ、山内委員長や大里に限らず、大の里の将来性に「夢」を抱く人は数知れない。まずは従来の記録を3場所も更新する、昭和以降最速の所要9場所で大関へ。優勝を手みやげに、文句なしの昇進を果たすつもりだ。【高田文太】