平野美宇か、伊藤美誠か。卓球パリ五輪代表争い最終ラウンド。平野が逃げ切る決め手、伊藤の逆転への条件は?<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、パリ五輪・卓球女子シングルスの枠を懸けて熾烈な争いを繰り広げる平野美宇選手と伊藤美誠選手に焦点を当てた記事だ。 (2023年12月6日公開) =================================
卓球女子シングルスの2つの枠を巡る争いが、いよいよ佳境に入っている。年内最後のパリ五輪選考会、全農CUP大阪大会。すでに選考ポイントでトップをひた走る早田ひな(790.5pt)がほぼ当確といえる状況の中、残る1つの枠を狙う、2位・平野美宇(486pt)と3位・伊藤美誠(451.5pt)が直接対決でぶつかり合った。結果は、4-0。平野のストレート勝ちに終わった。残る大一番、全日本選手権でも激しい火花を散らすであろう2人。平野が逃げ切るポイントはどこにあるか。そして伊藤に大逆転の秘策はあるのか。 (文=本島修司、写真=西村尚己/アフロスポーツ)
平野美宇の「決め手」と「凄み」
平野美宇の持ち味といえば、ハリケーンと呼ばれる強烈な両ハンドでの連打だ。体をしっかりと切り返し、台から離れない位置で打ち合う。 ボールのスピードだけではなく、打点のタイミングも速い卓球を展開する。それが最高の形で繰り出された時には、卓球大国・中国のトップ選手も圧倒することがある。 2023年は「衝撃の7月」もあった。WWTコンテンダー・ザグレブで、準々決勝で劉瑋珊、準決勝で蒯曼と中国2選手に連勝。そして決勝では、世界女王・孫穎莎を相手にフルゲームの接戦をものにして初勝利。中国勢力相手の3連勝を決めて奇跡的な優勝を果たしている。この平野特有の“爆発力”は、他の選手にはないものだ。 また、「対、伊藤美誠」という点でも、最近では引けを取らない試合が多くなった。11月に行われた全農CUP大阪大会でも、伊藤が表ラバーを貼っているバック側を、1ゲーム目から巧みに攻めた。伊藤の決め手のパターンである、フォア側に移動して出す巻き込みサーブも、キッチリと返球することができていた。 2ゲーム目はバックミートの打ち合いが続いたが、ここでも平野の精度がよかった。連続ポイントもあって圧倒している。 3ゲーム目では、伊藤が大きく回り込んで打ってくるフォアでのスマッシュをカウンターする場面もあった。これは伊藤に競り負けた7月の全農CUP東京大会では、伊藤に決められている得点パターンだ。そこを読み切っていた。このあたり、伊藤が「何をしてくるか」を見抜いている感じもある。 4ゲーム目も平野の勢いが止まることはなく、ストレート勝ち。結果、24.5ポイントあった差を、34.5ポイントへと広げた。